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「昨日、ありがとう、嬉しかった」
どうしても、伝えたかった。嬉しかったから。何かを肯定された気がした。
──俺が着くまでに、シュート練習をしてる宮原さんを少し見ていた。シュートフォームとか、ドリブルとか、明らかに経験者だってわかる。でも、うまくはない。
だからバスケやめたんだっけ?そっか、そうなのかもしれない。ふと、あいつの顔が浮かぶ。試合に出れなければ、3年間は無駄なのだろうか。考えたこともなかったな。宮原さんの健気な姿に、いつの間にか走り出してた。
「ムカつく!」って言われたけど。
宮原さんが見たいって言ったから、目の前で久しぶりにダンクした。絶対に外せない。感覚が懐かしい。
「いいなあ、そんな風に跳べたら、どんな景色が見えるのかな」
夕焼けの茜色に照らされた顔を俺に向ける。
「うん、俺もそう思ってた。だから、見てみようと思った」
もう一度、見てみたい、そう思えた。
俺、最近は空ばっかり気にしてる。
淡い青色、夕焼け、茜色。藍色になって、深い色に変わる。空、綺麗だなって思う。もう少し暗くなるの待ってくれって思う。
灰色だった、抜け出せないと思った。そんな世界から連れ出してくれた。
こんなことでって思った。小さなことで駄目になった。
でも、綺麗な空に気づけたのも、ほんの小さなことだった。
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