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部活が早く終わった日、河川敷へと向かう。
もう目の前にあるゴールは俺には必要ない。それなのにここに来る理由は一つしかなくて
ベンチの背もたれに身を預け、逆さまになったマンションのベランダを見る。この日も誰も走ってくる事はなかった。
俺の手元に、シルバーブルーのボールはなかった。預けている人は、全然姿を見せなかった。
学校では毎日会っていて、振り向けばそこにいる。笑っていても、どこかつまらなさそうにしている。その理由を聞きたいのに、宮原さんから話してくれる事はなかった。
俺にとっての特別が、向こうに取っては特別ではない虚しさを痛いほどに知った。
何で河川敷に来ないの?それは、何で河川敷に来たのかって疑問を持った時に答えは出ている。
俺を放っておけなかったからだ。学校にも来ないで、馴染めずに時間を消費させるためだけに学校に来ていた、そんな俺を放っておけなかったからだ。ただの同情だ。あの子、すごい面倒見がいいから。
こっち、向いてくれないかな。
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