640人が本棚に入れています
本棚に追加
高校というところ
高校の入学式が終わり、翌日のオリエンテーションではたっぷりのプリントに先生が捕捉の説明をしていく。
正直、読めばわかるだろうし、そんなことより友達になれそうな子はいるかな、とか、格好いい子はいるのかな、とか。
私の頭の中はそんな事ばかりだった。最初が肝心だ、何もかも。本当は聞こえた。ちゃんと聞いてた。でも、私は右隣の福谷由紀恵に話しかけるきっかけを作ったのだ。
「ごめん、福谷さん……先生、今何て言った?」不意に話しかけられた福谷さんは少し驚いた顔をしたが
「ごめん、私も全然聞いてない」
と、すぐに顔を崩した。
「そっか、ありがとう」私も笑顔でお礼を言った。感じのいい子だった。後でもう少し話しかけてみよう。緊張でそこからも先生の話なんて耳に入って来なかった。
チャイムの音を合図に、私はもう一度緊張した。
もう一度、勇気を出して……そう思った時、福谷さんが私の反対隣の和田さんに声を掛けた。
「ねぇ、和田さん、さっきのここ聞いてた?」そう言って私の尋ねた所を聞いてくれたのだ。
「ごめん、全然聞いてない。寝てた」
「いやいや、和田さんめっちゃ聞いて相槌打ってたよね?」
「……聞いてるフリ、得意なの」
和田さんの言葉に私も福谷さんも吹き出して
「ダメじゃん、うちら」って言い合って休み時間はあっという間に終わってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!