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入学から数日が過ぎても、私の前の席は空席だった。
プリントを配って貰うときは二つ前の席の子とかわりばんこで立ち上がって受け渡しした。
前の席は、どうやら男子らしく
「槇野。槇野周……は、今日も休みか」と、担任の益井先生、通称マッセンはそう言って
「次は……と、宮原!」
「……」
「宮原!」
「あ、はい!」
槇野くんってどうしたのかなと考えていたので次に自分の名前を呼ばれ慌てて返事した。
由紀恵に「唯、ぼーっとしすぎ!」とからかわれ、べーっと舌を出した。
マッセンから槇野くんに大しての言及は特になく、何事も無かったかのようにHRは終わった。その事に対して、由紀恵も梨花子も気にしていない様子だった。次の休み時間、疑問をそのまま二人に聞いてみた。
「義務教育じゃないからね」
「義務教育じゃないの!?」
「いや、もう義務教育になるんだけどね。とりあえず、今はまだ義務教育じゃない」
梨花子にそう言われ、私と由紀恵は顔を見合わせた。
「毎年何人かいるみたいよ。高校来ないで止めちゃう子。出席日数足りなくて中退、成績悪くて留年。中学生までとは違うんだよ」
「じゃあ、槇野くんもこのまま辞めちゃうのかな?」
「マッセンが何も言わないってことは、怪我したとか、体調不良とか、正当な理由がないんだよ、多分……」梨花子の言葉に
そうなのだと納得しても、納得しきれない様な気持ちになった。高校生になった、それだけではとても片付けられないような虚無感に襲われた。
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