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一
「明日から、もう来なくて良いよ」
確かに そう告げられたのに、何だかんだと上手いこと言われて、「退職願」なるものを書かされた。あくまで、こちらの自己都合ということにしたいらしい。
一生懸命やってきたのにな……
仕事の忙しさから解放される安堵と、必要とされなくなってしまった寂しさとが入り混じる。
明日から、どうしよう……
考えながらも、足は自然といつもの場所――図書館へ向かっていた。
ずらりと並んだ背表紙を眺めていると、『にじの妖精』というタイトルに目が止まった。
ファンタジーだろうか。僕は、思わず手を伸ばす。
表紙には、七色のドレスに身を包んだ愛らしい少女が描かれていた。彼女の背中にある羽は、朝陽を浴びて輝く水面のようにキラキラしている。
夢のある綺麗なものは大好きだ。それに、現実逃避したい今読むにはピッタリな話に違いない! ワクワクしながら表紙を開く――
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