『5時の妖精』

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『5時の妖精』

 俺が そいつと出会ったのは、二学期も終わりに近づいた十二月のある日のことだった。  日の短いこの時期、部活動は早目に終了し、午後5時までには校門を出ることになっている。  自主練に夢中になっているうちに、気が付けば残っているのは俺だけになっていた。タイムリミットの5時まで、あと5分に迫っている。 ――やばい、やばい。時間は絶対厳守なんだ。  急いで片付けを済ませ、荷物をまとめて とび出した。校門前の時計の針は、5時ちょうどを指している。ぎりぎりセーフだ。  その時だった。そいつは空から突然 降ってきたんだ。降ってきたといっても、雨や雪じゃない。それは、小さな小さな女の人だった。 「ハーイ、私、妖精なのっ♪」  小さな体の割に、はっきりとしたボリュームで、そいつは俺に話しかけてきた。 「何の妖精かっていうと――」
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