『5時の妖精』

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「ほら、また間違えてる!」  書き進める度、妖精は いちいち指摘してきた。 「ここも。〝あと5雰〟って何よ。雨いらないから」 「え? いや、冠ついてる方が、何となく かっこいいかなと思ってさ 」  年令を年齢、付属を附属とも書くように、分を雰とは書かなかっただろうか。あれ? 思い違いだったかな。 「わざわざ余計なもの くっつけて間違えるとか、あり得ないんだけど。もしかして――わざとやってるの?」  ムッとした。俺は ふざけてなんかいない。 「もう、静かにしててくれよ。気が散るじゃないか」  堪らず強めに訴えても、彼女は つんと澄まして 「私を誰だと思ってるのよ」  なんて挑発してくるものだから、尚更ムキになってしまった。 「5時の妖精なんだろ。もうとっくに5時は過ぎたんだから、さっさと帰ったらどうなんだよ!」  途端に 彼女は ものすごく寂しそうな目を向け、そのまま俯いてしまった。
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