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「いやぁっ」
叫びながら、左に顔を背けた。
「お兄ちゃん、何なの。これ。おかしいよ。外して」
そんな私を無視し、お兄ちゃんは右頬に触れていた手をゆっくり私の唇に移動させ、親指で唇をなぞっている。
心臓は鼓動が大きく鳴っている。お兄ちゃんが怖い。
「······僕ね····ずっと美由が好きだったんだ」
ゆっくりと口からでる言葉に目を見張り、顔を背けたまま目線だけがお兄ちゃんの方に向いた。
「······だけど、みんな僕と美由を引き裂こうとするんだ。·······絶対にそんなことさせない」
お兄ちゃんの親指の先が唇の内側に入り込む。
「·····でも、これでずっと一緒だね」
言葉に理解が追い付かずただ怖くて仕方ない。
唇から指を外し、私の顔を自分の方へもっていくと唇を重ねた。
「やめてっ」
私は声をあげるとさらに言葉を続ける。
「私はそんな風はみれなっ」
しかし、言葉を遮るように唇を重ね、ヌルリと舌を入れてきた。
気持ち悪いと感じたその瞬間、ガリッと鈍い音が響いた。
何かを噛んだ感覚と鉄の味が広がった。
反射的に私から離れたお兄ちゃんはゆっくり自分の口元を触った。
そして、別人のような冷たい瞳で私を覗いていた。
怖いと思う前にパンッという乾いた音と同時に視界が揺れ、頬が熱くなる。
その後に痛みが広がった。
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