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「雪女の、殺人の動機とはいったい何だったのか?」
森脇雄馬は突然立ち上がり、みんなに向かってそう問いかけたあと、小さくガッツポーズをとって見せた。
床に体育座りして肩を寄せあっていた仲間たちは、疲れた顔を持ちあげ、「ハア?」という表情で、森脇を見あげた。
森脇は続ける。
「いま、ひらめいたんだよ、雪女の物語についての疑問点を解決する論理を。これでいけるんじゃないかと思う。うん、我ながらいい考えだ」
「おい、森脇、なにひとりで納得してうなずいてるんだよ」
つっこみを入れたのは、藤波洋平。森脇と同じ大学の二年生で、同じ「創作文学研究会」の仲間だ。
「あー悪い悪い、やたらとうまい考えがひらめいたものだから、つい一人合点してしまった。じゃあ、みんなにわかるように、ひとつひとつ説明していこうか。そのためには、まず、雪女の話を復習しておいたほうがいいかな。田中くん、簡単に雪女のあらすじを述べてみてくれないか」
森脇が話をふった田中くんというのは、同じ部員で一年生。かなり太っていて、一般に女子からキモイと言われる容貌をしている。
「えー、ぼくですかぁ?」
「うん、きみだ」
田中はしかたないといったようにあきらめて、森脇の命に従った。
「えー、確か、こんな話でしたね」
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