4人が本棚に入れています
本棚に追加
「いや……別にダメとまでは言わないよ、こんなときだし」
「ほかの人はどう? 木原は?」
「うん……まあ、別に……」
木原と呼ばれたのは、同じサークルの二年生。やせっぽちで、眼鏡をかけて、気の弱い、いわゆる青白いブンガク青年だ。
「あとは、そう、きみ、えーと……?」
森脇が、紅一点を指さして、首をひねった。
「由紀です。渡辺由紀。森脇先輩、いつになったら覚えていただけるんでしょうか?」
渡辺由紀と名のった少女は、ちょっぴりすねたように口をとがらせた。
「あー、ごめんごめん。そう、由紀ちゃんだった。どーも女の子の名前は覚えられなくて。うん、由紀ちゃん、とってもかわいいよ」
「なんですかそれ? とってつけたみたいに」
「いやホント、うん、かわいいから」
「ハイハイ」
そんなふうに応えつつ、由紀はまんざらでもなさそうだった。
「で、由紀ちゃんは、この話題はどう? 続けてもいい?」
「ええ、どうぞ」
「あと、田中くんは、もちろんいいわけだから」
「ええっ、ぼくだけ、初めからOKありきですか? まー、いいですけど」
最初のコメントを投稿しよう!