プロローグ

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プロローグ

俺はただ漂っていた。 ふわふわ、ふわふわ… あいつに導かれなかったら俺は今頃どうしていただろうか? 「すみませーん、あなた何してるんですか?」 「え?」 「僕、今成仏していない方を導いてるんですけど」 「俺?」 「あなたです」 綺麗な顔をした人に声をかけられた。 「ちなみに僕、小豆洗いなんですけど」 人じゃなかった。 「今人間になるために修行中なんです」 じっくり話を聞いていると、小豆洗いでありながら人間になるために修行をしているのだと言っていた。 「で、あなたは何で成仏できてないんですか?」 何でだっけ。もう長いことこうやって漂っている気がする。 「それが分からなくなっちゃったんですよね」 「あなた何処かで見たことある気がする」 「俺、何者だろう…」 「あ!もしかしてあなた七瀬寛太さん!?」 七瀬寛太 懐かしい響きだった。 「スーパーアイドルだった七瀬寛太さんじゃないですか!?三年前に亡くなった」 「あ、そうだ!俺アイドルだった」 ソロ活動していて、毎日毎日とても忙しくてまともにプライベートなんてなかった。 「超忙しかったんだった」 「大きな会場でコンサートとかして、ドラマにバラエティに引っ張りだこでしたよね。僕人間のテレビすごく見てたんで知ってます」 「そうだった!てか小豆洗いもテレビ見るんだね」 「小豆洗いだってもう今は小豆ばっかり洗ってませんから」 柔らかな空気の中、彼と話しているうちにだんだん人間だった頃の記憶が蘇ってきた。
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