泣かない女が泣けるまで

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泣かない女が泣けるまで

「星村さん、私、わたし……」  彼に伝えたいのに、言葉が出てこない。代わりに涙がはらはらとこぼれ落ち、私の思いを伝えていく。自分がこんなに泣けるなんて、知らなかった……。 「すみません、泣かせようと思ったわけじゃないんですけど」  星村さんは慌ててポケットからハンカチを取り出し、私に手渡してくれた。 彼の言葉も仕草も、何もかもが愛しかった。星村さんと離れたくない。このまま終わりにしたくない。  涙をハンカチで拭き、少し心を落ち着けると、精一杯の笑顔を彼に向けた。 「お願いがあるんです。私と一緒にこれからも星を飲んでくれませんか? できればずっと」 「ええ、いいですよ。御一緒しましょう。……ん? これからも? 柊さん、それって……」 「瞳子(とうこ)でいいです、星村さん」 「それじゃあ僕と、付き合ってもいいってこと!?」 「ええ、私でよければ。よろしくお願いします」  星村さんの顔が一気に破顔(はがん)し、星空へ向けて両手を伸ばして万歳した。 「やったぁぁぁ!!」  子どものように無邪気に喜ぶ彼は、やっぱり昔飼ってた柴犬のようで、懐かしくて愛くるしい。そんな彼の側にいられることが、たまらなく嬉しくて、また涙がにじんでくる。 「乾杯しよう、瞳子」 「ええ、喜んで。私も『貴史(たかし)』って呼んでいい?」 「もちろんっ!」  嬉しそうに叫ぶ彼を微笑ましく見つめながら、シャンパンで乾杯をした。喉に流れ落ちる爽やかな味わいを楽しみながら、貴史と共に星を眺める。この星空を、私は生涯忘れることはない。  彼と共にこれからも、幾千幾億もの星を飲んでいこう──。           了  
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