22人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
泣かない女が泣けるまで
「星村さん、私、わたし……」
彼に伝えたいのに、言葉が出てこない。代わりに涙がはらはらとこぼれ落ち、私の思いを伝えていく。自分がこんなに泣けるなんて、知らなかった……。
「すみません、泣かせようと思ったわけじゃないんですけど」
星村さんは慌ててポケットからハンカチを取り出し、私に手渡してくれた。
彼の言葉も仕草も、何もかもが愛しかった。星村さんと離れたくない。このまま終わりにしたくない。
涙をハンカチで拭き、少し心を落ち着けると、精一杯の笑顔を彼に向けた。
「お願いがあるんです。私と一緒にこれからも星を飲んでくれませんか? できればずっと」
「ええ、いいですよ。御一緒しましょう。……ん? これからも? 柊さん、それって……」
「瞳子でいいです、星村さん」
「それじゃあ僕と、付き合ってもいいってこと!?」
「ええ、私でよければ。よろしくお願いします」
星村さんの顔が一気に破顔し、星空へ向けて両手を伸ばして万歳した。
「やったぁぁぁ!!」
子どものように無邪気に喜ぶ彼は、やっぱり昔飼ってた柴犬のようで、懐かしくて愛くるしい。そんな彼の側にいられることが、たまらなく嬉しくて、また涙がにじんでくる。
「乾杯しよう、瞳子」
「ええ、喜んで。私も『貴史』って呼んでいい?」
「もちろんっ!」
嬉しそうに叫ぶ彼を微笑ましく見つめながら、シャンパンで乾杯をした。喉に流れ落ちる爽やかな味わいを楽しみながら、貴史と共に星を眺める。この星空を、私は生涯忘れることはない。
彼と共にこれからも、幾千幾億もの星を飲んでいこう──。
了
最初のコメントを投稿しよう!