22人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
泣ける女
世の中は涙で満ちあふれているらしい。
『切ないラストに涙が止まらない!』
『世界中で感動の涙!』
『きっとあなたも号泣する!』
少し街を歩いたり、書店を覗いたりすると見かける宣伝の数々。世の中には切なくて泣けるものがたくさんあるようだ。その多くは映画や本、漫画や動画などだが、私はそういったものを見たり、読んだりしても泣いたことはない。
「良い物語」「素敵なお話」
とは思う。でもそれだけだ。
泣けると評判の映画を元カレと一緒に観に行って、彼は涙を堪えるのに必死だったのに、私は泣かなった。
「感動しなかったの?」
「感動してるよ」
「でも泣いてない」
「泣かないと、感動した証しにならないの?」
「いや、そうじゃないけどさ。こう感動を分かち合うっていうかさ。なんか、つまんないオンナだな、瞳子って」
あふれる涙をハンカチで押さえながら、弱々しく泣く女と付き合いなかったのだろう。
思えば、いくつかあった卒業式でも私は泣いたことはない。お世話になった恩師との別れでも同じ。
友人たちは、ボロ泣きだったのに。
私だって別れは辛いし、切なくなる。でも泣けない。
泣いてる彼女たちを支えてあげなければ、恩師の前で泣いて心配させたくない。などと考えてる私に涙の出番はない。
人前で泣ける女は、それだけできっと、ひとつの才能なんじゃないかと思う。
私もそんな女になれなら、少しは可愛げのある女になれるのだろうか?
最初のコメントを投稿しよう!