出会い

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出会い

 通勤帰りの駅の構内で、ひとつの広告に目を留めた。  人であふれる駅の構内の一角に飾られた、美しい星空のポスター。 『満天の星空をあなたも見てみませんか?』  山への旅を誘う広告だった。  旅行がしたかったわけではない。でも星空には心惹かれた。 「きれい……」  無意識に、ぽつりと呟いた時だった。 「星、お好きですか? (ひいらぎ)さん」  聞いた覚えのある声。驚いて振り返ると、取引先の営業の人だった。名前はたしか……。 「星村さん、でしたよね?」 「わぁ、僕の名前、覚えててくれたんですか? 嬉しいな。そうです、星村 貴史(ほしむら たかし)です」  人懐っこい笑顔を浮かべた星村さんは、女性社員に隠れた人気がある。なんでも某アイドルに顔が似てるとか。男女関係なく笑顔で応対する彼は、私にとって仕事先の人にすぎなかった。 「僕も星好きなんですよ。名前が『星村』だからじゃないですよ? 星を見てると心が洗われる気がするんです。柊さんもそうですか?」 少しあどけない顔なのに、妙にスーツが似合っている。屈託(くったく)のない笑顔を浮かべ、嬉しそうに星の話をする。  なんだか、昔飼ってた柴犬みたい──。  和犬特有の丸まった尻尾が彼の後ろにあって、私と仲良くなりたいと、ぶんぶん振り回している。  失礼にも、そう感じてしまったからだろうか? その後私と星村さんは、たまに会って食事をするようになった。
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