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星を飲む
「柊さんは涙の代わりに、幾千もの星を飲みこみながら、生きてこられたのでしょうね」
「え……?」
夢見心地の私に、星村さんは言った。
「柊さんは涙の代わりに感動や悲しみ、怒りといった星々のような様々な感情を飲みこみながら、それを力に変えて頑張ってきたと思うんです。僕はそんなあなたの凛々しい姿に、惹かれました」
「星村さん……」
「ようは一目惚れなんですけどね」
星村さんは照れくさそうに頭を掻いた。
「知ってますか? シャンパンを飲むことを『星を飲む』というそうです。シャンパンの億にもおよぶ泡を星に見立ててるそうですが、とても素敵な言葉ですよね。最後に、あなたにこの言葉を伝えなかった。どうか御自分を『かわいくない女』だなんて言うのは止めてください。僕にとってあなたは、とても素敵な女性なんですから」
星村さんの言葉は、星の煌めきと共に、私の心に沁み込んでいく。しゅわしゅわと弾けるシャンパンの泡は、心のわだかまりを星空へと溶かしていった。
私の頬にひとすじの涙がこぼれ、シャンパンの中に落ちていった。泡は涙を優しくつつみ込み、黄金色の飲み物へと姿を変えていく。
「私、泣いてる……?」
それは自分でも驚くほど久しぶりに感じる、温かな涙だった。
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