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序章
夜の都会。
それは人を狂わせてしまう力を持っているのかもしれない。
酒に酔う者、情事に身を任せる者、人に喧嘩を売る者、果てには犯罪行為をする者。
雰囲気に飲まれてか、はたまた元から狂っていたのか、そんな人が毎日のように発生する。
そして家出少女もまた然り、だ。
ネオン街の深夜にて、少女はうずくまっていた。
駅近くの道路の脇、繁華街へ続く道。人は通るが、ほとんどが男性で占められている。
少女は夜空を見上げた。傷だらけの顔、耳のピアス。それらが月に照らされた。
「君、どうしたの?」
物好きがいたものだ。家出少女など、面倒臭い以外の何者でもないというのに。
ピシッとスーツを着たその人は、少女に手を伸ばした。冷たい頬に触れ、少女の瞳を覗き込む。
「っ……」
涙を見られたくないのだろう。
きゅっと結んだ唇になんとも言えない欲求を感じながらも、ギリギリの理性で抑え、頭をなでる。
「一緒に帰ろう」
選びに選ばれたであろう言葉は、心地よく少女に響いた。
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