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第一章
暁月葵と名乗ったその人は、中性的な容姿をしていた。
清潔そうな短めの髪、綺麗な琥珀色の瞳、中途半端な背丈。それらから、性の情報を受け取ることは出来なかった。
「お風呂、沸いたよ」
タオルを首にかけ、パジャマに着替えた葵は拾った少女に声をかける。
「あ……ありがとうございます」
少女はおずおずとバスルームへ向かう。
狭くも広くもない部屋。一人暮らしらしく、物も大して多くない。
ドアを開け、着替えがあることを確認する。
わざわざ用意してくれたのだろうか。
そんなことを頭の隅で考えながら、身体によどむ疲労を癒そうとする。
ふうっと息をつく。今日は色々あった。シャワーの温度が心も温めていく。
果たしてこれは誘拐とはならないだろうか。
葵は自分の行動を疑い始めていた。連れて帰って来てしまった少女は制服姿だった。未成年をお持ち帰り、という非現実に戸惑いながらも事実として受け入れはじめている。
カタっとドアを開ける音が耳に届く。音の方向へ視線を向ける。目に入るその光景に胸が高鳴る。
自分の服を着替えに置いておいたのは葵だが、それでもなかなかの破壊力だった。葵でさえゆるい部屋着を女子高生が着るとこうなるのか。
葵は萌え袖は正義! と叫びたくなった。
「大きいですね……」
そう笑う顔には少しの不安と、緊張が現れていた。
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