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あの日、電車で再会して、駅で喋って、わたしたちの町を歩いた。
あと、公園でお茶を飲んだ。
帰り道もやはり、手を繋いで帰った。
ただそれだけの日のはずだった。
よく分からなかったのは、別れ際に菜々がわたしにキスをしたことだ。
あの不思議な微笑み方をして、頬に一瞬だけ唇が触れたのだ。
わたしは何か訊いた方がいいのかと思ってまごついた。
けれど、菜々は「また前みたいに仲良くしよ。いっぱいメール送るね!」と言って、さっさと電車に乗っていってしまった。
キスなんて恋愛関係でもないとしないと信じているわたしは途方に暮れた。
でも、菜々はどこまでも普通の出来事といったふうに去って行ったので、わたしは勝手にやきもきしなくてはならなかった。
そして、それから結局、菜々からメールはこなかった。
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