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「――ちゃん! 姉ちゃん!」
私を呼ぶ声がする。なんだか、まぶたを持ち上げるのがひどく億劫だが、ゆるゆると目を開く。
「よかった、気づいたか、蒼海姉ちゃん」
至近距離に、ものすごい不安そうな玲司の顔があって、思わず心臓がどきりと高鳴ってしまう。こんなに顔を近づけたのは、子供の頃、ふざけてキスごっこをして以来だ。
熱を持つ頬、ばくばく言う心臓に、おさまれ、と念じながら、しかし瞬きする。
私達は死んだはずだ。『アペルピスィア』、絶望の星が降ってきて、人類丸ごと滅びたはず。なのにこうして玲司が私に話しかけてくるというのは、ここは天国だろうか。それにしては心拍数がリアルだし、背中に触れる石の感触がひんやりと伝わる。
ん? 感触?
私は更に瞬きを繰り返す。死んだら感覚なんて無くなるものだと思ってた。不思議に思ってゆるゆると身を起こした時。
「ああ、神子様がた! お目覚めになられましたか!」
喜びに感極まったような高い声が耳に滑り込んできて、私はそちらを向く。そして、驚きに目を見開いた。
肩まで伸びたはちみつ色の髪を揺らし、紫色の瞳を潤ませる、十五、六歳くらいの少女。ゲームの中で見るような、金色の縁取りをした群青のローブを羽織って、白い絹の手袋をはめた手を、祈りの形に組んでいる。
「神子、様?」
疑問たっぷりの声を洩らし、顎に手を当てて首を傾げる。と、しゃらり、という音が耳に触れたので、自分の身を見下ろす。そして更に驚く羽目になった。
目の前の少女のような、群青の上着とスカート。そしてブーツ。腕には銀色のブレスレットがはまっていて、それが音を立てたのだ。
更に驚愕すべきことに、私の腰には剣が帯びられている。青い石をはめ込んだ柄のそれは、到底おもちゃなどではない事を、重みで伝えてくる。
慌てて視線を上げる。玲司も同じように群青の上下に身を包んで、こちらは背中に槍を背負っていた。
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