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戦闘純文学者向け小型艦艇(コルベット)の登場
■ 戦闘純文学者向け小型艦艇(コルベット)の登場
■ コルベットの概略と簡略史
コルベットは駆逐艦より小さな艦艇でおもに沿岸や近海で対潜哨戒および掃海任務を行う。
外洋作戦行動能力をもつものはフリゲートとよばれる。
もともとは十八から十九世紀にかけて造られた三本マストの軍艦で、商船の護衛や沿岸警備に用いられた。
簡単な砲を一門もち、当初の全長は十メートル前後だった。その後、要求に応じて肥大化の一途をたどり、二十世紀には五十メートル、モーダルシフター社会を迎えた二十七世紀においては百二十メートル程度になっている。
二十世紀、第二次大戦ごろは小回りがきき徒党を組んでドイツのUボートを撃沈するなど活躍し、駆逐艦の艦長を羨ましがらせたという。
英国やカナダでは捕鯨船の設計思想を流用したフラワー級コルベットが多数建造された。これは、軍艦の量産技術を持たない中小の造船所でも建造が可能なように配慮されたものである。
この考え方は二十七世紀の戦略創造軍においても生かされている。
三日間戦争以降、ライブシップの公民権運動が盛り上がりを見せ、艦艇の調達が難しくなるなか、戦闘純文学者たちがパーソナルでリーズナブルな支援艦艇を求める声が高まった。
また、ライブシップやメイドサーバントでない生身の戦闘純文学者もライブシップに相当する艦を強く要望した。
いわゆる人外に分類される者は生体対消滅炉を体内に持ち、これを術式の源泉にしているが、戦闘純文学は知的生命体固有の人間原理に根差したものであるため、適切な動力源があれば誰でも行使できる。
この事は、三日間戦争においてハイフォン彗星王国側の戦闘純文学者が偽シア女王が操る強襲揚陸艦シア・フレイアスター号の出力に依存していた事でも明らかである。
そこで術式を補助する専用ジェネレーターを搭載した小型艦船と戦闘純文学者が作戦行動を共にする運用思想が芽生えた。
術者用宇宙艇の普及にはファンデルワールス装甲、与圧結界、モーダルシフターなどのラジオニクス工学が与しているのはいうまでもない。
最低でも恒星系規模、ともすれば超銀河団クラスの展開を前提とするライブシップと比べて戦闘純文学者向けラジオニクス艦艇の行動範囲は惑星規模であり、まさにコルベットは理にかなっているといえよう。
ラジオニクス・コルベットの建造は衛星軌道上のドックではなくライブシップの超生産能力を用いている。
これは戦時急造可能な護衛艦艇を常時確保できる程度の工業力を維持するためとライブシップの雇用安定策を兼ねている。
■ ラジオニクス・コルベット 新フラワー改クラス
西暦2670年にシャルルマーニュ連合スコットランドのライブシップ マーセデス・ラファイエットが第二次大戦勃発直後から英国で量産されたフラワー級を模範にして試作したのがラジオニクス・コルベットのはじまりとされる。
縫い針から惑星破壊プロトンミサイルに至るまで何でも製造可能といわれるライブシップの超生産能力であるが、対象物の制作工程を学習しなければ技量を発揮できないため、マーセデスはHMCSスノーベリーを参考にしたと思われる。
■ 武装
旧来のフラワー級改型では前部の砲座に四インチ単装砲一基と三インチ単装緩射砲を採用。
対潜兵器としてヘッジホッグ対潜迫撃砲、艦尾に爆雷投射機4基、爆雷投下軌条二基を備えていた。
新フラワー改クラスでは戦術情報処理装置と連携しC4Iを実現している。
搭載砲はラジオニクス化したボフォース五七ミリ単装速射砲に換装し個艦防御火力を向上している。
重力レンズ発生器を追加し電磁波全帯域ステルスを行う事で被探知性の低下を実現している。
個艦防空能力としてはVLSを増設。シースパローIBPDMS、六十二口径七十六ミリ単装速射砲、高性能二十ミリ機関砲。
量子魚雷発射管、ラジオニクス艦対艦ミサイルなどで水上打撃能力の向上を図っている
ヘッジホッグはラジオニクス化された上で射程を延長し、アスロックを追加している。
これは誘導弾の使用が困難な浅海域での非対称戦争を想定しているためである。
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コヨーテ・枕崎嬢の愛艦スノーベリー
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