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創立までのいきさつ
「いやはや。私が永遠の眠りについている間に娑婆ではこんな地殻変動が起きていたとはね!」
新明教授はかなり興奮しているようだ。無理もない。人の死は異星人によって仕組まれた制度で、それを宿命だと信じて疑わなかったのだから。
人間の理解は絶対ではない。それを自らの手で打ちこわし、真実を勝ち取ってきた。
そしてついには、科学の進歩が生死の概念すら正してしまった。
人工知能とクローン技術と唯心論と超心理学の融合が霊長類を死から解放すると誰が予想しただろう。
神を僭称していた知的生命体は地球人に寿命を課すことで知識の世代間交流を分断してきた。
死ねば経験や技術が失われる。それを継承するために後継者が一から学習する。教育に費やす時間と労力を人類の進歩に振り向けばどんな未来が開けるだろう。
「特権者は恐れたのです。それで”概念の海”から永劫回帰惑星を発掘し、人類の世界線上に据えました。肉体が朽ちれば魂がプリリム・モビーレに漂着する。それを輪廻転生の罠で永久ループさせる。人類はいつまでたっても光年の壁を克服できません
」
「それをカミュが打破したというのだね? あの、カミュが三途の川を渡った!」
彼がどういう経緯で脱走したのか不明点が多い。
ただ、彼は南極のアムンゼン・スコット基地のクローン培養槽に降り立ち、新しい肉体を得た。
そして、歴史的な欺瞞を暴露した。
コペルニクス的転回にならってケルベロス的大瓦解と呼ばれている。
◇ ◇ ◇
● ケルベロス的大瓦解
━━人を殺せば死ぬ。二度と生き返ることはない。
わたしたちはこの様に教えられ、戦争への戒めとしてきた。
この大前提を根幹から崩したのが「特権者」の存在である。
人間の肉体は死んでも魂は不滅であると宗教家が叫び続けてきたが、科学的に立証する手段がなかった。
文豪カミュの魂が人工臨死体験中の被験者に乗り移るまで、わたしたちの信念に委ねられてきた。
「彼」はこう語った。
二度と生き返る事は「ない」のではなく「ないことにされているんだ」
肉体のくびきを脱した精神が宇宙を渡りあるき、知見を深め、あまねく広がっていくことは自然の摂理である。
これを妨げている者がいる。神を名乗る精神生命体「特権者」である。
宇宙における知的生命体の覇権を確立するために、彼らは死者の魂を「永劫回帰惑星プリリム・モビーレ」に捕縛していた。
これは【ケルベロス的大瓦解】とよばれ、コペルニクスに比肩する普遍的価値観の大転換をもたらした。
カミュがどのようにして現世に逃れてきたのかはいまだに不明だが、彼が故人たちとの意思疎通を媒介することにより、人類は突破的革新を遂げた。
あまたの超兵器が冥界へ投入された特権者戦争が終結したのは2004年8月15日のことである。
【レモン型のモンスターと闘う能力者】
存在確率を操作することは、ありとあらゆる不条理を実体化させる事に他ならない。人間の未知なるものに対する根源的恐怖を特権者は武器として利用した。それに立ち向かうためには世界を記述してやろうという戦闘純文学者の気概と貪欲な創作意欲が必要だった。
● 国連軍の再編
特権者戦争の勃発においてアメリカは地球全土から駐留軍を招集し冥界へ振り向けることとなった。
この時点でのアメリカ軍は次の九武官組織からなる。
合衆国陸軍
合衆国海軍
合衆国空軍
合衆国海兵隊
合衆国沿岸警備隊
合衆国公衆衛生局士官部隊
合衆国海洋大気局士官部隊
合衆国情報軍
合衆国宇宙軍
これらの組織はジュネーヴ条約による疾病者・捕虜としての保護対象となる正規軍であったが、冥界侵攻にあたり新たに合衆国心霊軍が創設され十武官組織となった。
● 地球統合軍の再編
特権者に対する人類規模の反抗を効率化するために、国連加盟国間で軍の統廃合がおこなわれた。
再編に要する混乱を最小限にとどめるため、反抗作戦の統帥権は米軍が握ることとなった。
既に存在していたアメリカ統合軍(USCOCOM)は陸海空および海兵隊、沿岸警備隊を含めた五軍と情報・宇宙軍の特殊戦域軍を横断的に編成していたが、各国の軍は管轄地域別および機能別に米軍傘下におかれる形で事実上の吸収合併が行われた。
管轄地域別にみると五つに大別される。
地域別:中央軍、アフリカ軍、欧州軍、太平洋軍、南方軍
これに機能別の四軍が加わる。
特殊作戦軍
戦略軍
輸送軍
心霊軍
とりわけ、核兵器と宇宙軍と情報軍を統括するアメリカ戦略軍はもっとも重要な位置にあり、現在の戦略創造軍の基礎となった。
● 復活死者の反乱懸念と大量破壊兵器流出~ハドラマウト事変
冥界の崩壊により特権者が観測可能宇宙外へ壊走したあと、古代ローマ帝国民やモンゴル帝国など世界規模の版図を誇っていた復活者たちと現世人類のあいだで地球を帰属をめぐる紛争が勃発した。
さいわいな事に人類は、アストラル・グレイス号を中心とする生きた宇宙船━━いわゆる、ライブシップを所有しており、復活者たちが地球外にあらたな領土を見出すことで決着がついた。
しかし、事件はおこった。
2004年9月28日 南イエメンのハドラマウトにおいて、旧イエメン共和国独立時に半強制的に領地を没収された諸侯達が国土の回復をもとめて蜂起した。
後の世にいう「ハドラマウト事変」である。
特権者戦争末期に生産された超兵器のたぐいは、サウジアラビアのキング・ハリド軍事都市にて国連の管理下にあったが、内通者との共謀により反乱者側に流出した。
ただちに国連軍の介入によって鎮圧されたが多数の兵器が闇に消えた。
● 白夜大陸条約の調印
ハドラマウト事変を契機に超国家的な大量破壊兵器の管理と対テロ戦争を含む常設軍を求める声が高まった。
南極条約を発展的に解消した白夜大陸条約が南極点のアムンゼンスコット米軍基地にて調印された。
<i132654|12666>
参考資料
~wikipedia 南極条約の項目より引用
概要
研究基地と各国が主張した領有権
南極は気象条件が厳しいため人の定住が困難であり、長い間未踏の地であった。しかし1908年にイギリスが南緯50度以南、西経20度から80度に至る範囲の諸島の領有を主張したのを切っ掛けに、他の国も南極の一定区画の地域の領有を主張するに至った。国際法における国家領域取得根拠としては先占 (occupation) があるが、南極はその気象などのため実効的支配が困難であり先占の法理をそのまま適用するのは無理があるとして、先占がなくても一定の範囲で領域の取得を認めるとするセクター主義が主張された。
セクター主義には反対する国家も多く国際法として確立しているわけではなかったが、科学技術の進歩によって実効的支配の可能性も否定できなくなり、領土の獲得競争が展開されるのは必至となった。それを阻止し、南極地域(すべての氷棚を含む南緯60度以南の地域)の継続的な平和的利用のために締結されたのが、本条約である。
南極が、もっぱら平和的目的にのみ利用されるべきと定め、一切の軍事利用を禁止するとともに、その実施を確保するため、地上および空中の自由な査察制度を設けることとした。平和利用では、将来、国際協定で認められない限り、すべての核爆発と放射性廃棄物の処分を禁止している。この平和利用のための核爆発をどうするか最後までもめたが、結局日本のあっせんにより、将来一般協定ができれば、南極にも適用するが、それまで一切禁止するという線でまとまった[1]。
1957年から1958年の国際地球観測年で南極における調査研究に協力体制を築いていた日本、アメリカ合衆国、イギリス、フランス、ソビエト連邦(現ロシア)、アルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、チリ、ニュージーランド、ノルウェー、南アフリカの12か国が1959年12月1日に南極条約を採択した[1]。条約の概要は下記のとおり。
南極地域の平和的利用(軍事的利用の禁止)
科学的調査の自由と国際協力
南極地域における領土主権、請求権の凍結
核爆発、放射性廃棄物の処分の禁止
条約の遵守を確保するための監視員の設置
南極地域に関する共通の利害関係のある事項についての協議の実施
条約の原則および目的を促進するための措置を立案する会合の開催
条約締結国は、2013年10月時点で50か国である[2]。
なお、条約成立前のセクター主義に基づく領域の主張は、条約上は、否定も肯定もされているわけではない。
~~引用終わり
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