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兵器体系(概論)〜戦闘機とか戦車とか戦艦とか①
掃き溜めに鶴というが、彼女はさしづめ棺桶に蝶といったところだろうか。ローレンシアと巡る最新兵器博物館の旅は私にとって生涯忘れられない思い出になるだろう。
もっとも意識が死ぬことのない世界に人生という概念が通用すればの話だが。
「教授が眠っておられる間に兵器は進化――というより、パラダイムシフトが起きました」
「魔術の類が使えるようになったと復活者リハビリテーションセンターで聞いたが。鋼鉄の戦車を目の当たりにしているとピンと来ないんだがね」
私は子供向きのアニメーションに良くある徒手空拳の合間に光線技を放つ格闘を連想してた。だが現実は想像を二桁も超えていた。
「基本的にターゲットを破壊する、という兵器の機能は旧来と変わりません。その実現方法がまるっきり別の概念に置き換わっているのです」
ローレンシアが言うには、火薬や核爆発といった物理的な反応に頼らないのだという。
破壊力をパッケージ化して破壊目標に届けるといったやり方では実体を持たない相手に通用しない。
エネルギーを投射するのではなく、思念を相手に押し付けるというのか。量子力学の観測効果で相手を屈服させるのだそうだ。
「接近して眼力で殺すと理解すればよろしいかな」
すると、ローレンシアはうなづいた。
「そうですね。私たちは認識が実体化する宇宙に住んでいます。人間の理解は物理法則と相互作用すると考えてください。そこで従来の物理的兵器は非量子力学兵器という分類になっています」
そういうと、見学コースに案内してくれた。
◇ ◇ ◇ ◇
兵器体系(概論)~非量子力学兵器編
SV(Strategic Visionary) 戦略創造軍兵器体系
● 近代兵器集約論
二十世紀末、冷戦終結後の湾岸戦争、国連ソマリア活動を経て戦いの主軸は超大国間の衝突から非対称性戦争へと移行しつつあった。
戦争の意義が国家間同士の対立から、国境を越えた警察活動へと様変わりしたのはひとえに人類の成熟化といえよう。
それは増大する一方の軍事費を兵器の開発コストから消耗品の調達へ振り向けたいという各国軍部の思惑がもたらした結果でもある。
年々、高度化の一途をたどる要求仕様と保有兵器の老朽化は軍そのものの存亡を脅かす内患そのものであった。
後継機種を新たに開発するコストと、耐用年数を超えてだましだまし使い続ける維持費の暴騰。
この二大敵を制圧するのはとてつもない労苦を伴う。
各国は装備の近代化を抑制するため、軍装品の国際規格化に拍車がかかった。
テロリスト相手に超音速巡航もステルスも必要ない。
この時代、NATO・CIS・APEC諸国軍の間である程度の互換性が保たれており、戦略創造軍の発足時にはAK-47などデファクトスタンダードとなった「枯れた」装備を除いては、ほとんど混乱もなく軍装品の集約、再分配がおこなわれた。
● 歩兵
小火器類としては歩兵用小銃にNATO弾が使えるステアーAUG A3SFが採用された。これにカービンモデルであるPスペシャルレシーバーやLSWモデルが追加された。
● AFV
対テロリズムは時間との戦いでもある。緊急即応性が何よりも求められるため主力は空挺戦車で固めている。
ロシアのBND空挺戦闘車BMD-3に加え、2S25スプルート-SD 125mm対戦車自走砲に105mmライフル砲を搭載したタイプも導入されている。
これ以上の威圧を行う場合は巡航ミサイルやマップ兵器にご登場願わねばならない。
水上打撃ユニットとして当初予定されていたズムウォルト級ミサイル駆逐艦がコスト増のためキャンセルされた結果、アイオワ級戦艦や第二次大戦後に核実験の標的艦として消尽されずモスボールされていた旧日本軍の戦艦を運用している。
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