第十四章 訓えの終焉

105/108
前へ
/1421ページ
次へ
 ……生まれる前から、何代にもわたって塗り重ねられてきた重圧から、やっと解放されたんだ。  その胸中はおれなんかには測りきれない。  でも、本当によかった……。  ルミの手が、おれの手を痛いくらいに握りしめてくる。  どんな顔をしてるのか、ちょっぴり気になるけれど、たぶんニヤけてるおれを見られるのは、何だかイヤだ。  振り向かないで空を見上げたおれは、深く息を吸った。  そしてふと目を閉じ、心の底から感謝を捧げる。  ……訓えの終焉を完遂できたのは、みんなの助けと、おれにネメイアスの棍を仕込んでくれたじいちゃんのおかげだ。  本当にありがとう……。  ――終わり良ければ総て良し――  じいちゃんの最期の言葉を思い出し、つんと鼻に沁みたおれの脳裏に、煌めく金文字がでかでかと並んだ。 『ああ、遂にやり遂げてくれたわ! 同志ラダマ、同志ニムロデ! 我が主コヴェート、怠惰の神ルーデンス、そして性愛の神アマトリアよ、アナタ方の悲願は、斯くの如く人間(ホムス)自らの手により成就されました! 今や人間との通交を妨げるものは何も御座いません! 彼ら“約束の六人”に、永久(とこしえ)の祝福を……!』  グルマルキンの感極まった文字が、おれとルミをガツンと撃ちのめした。  カレ兄とシルク姉さんの肩も、同時にびくんと揺れている。 「クロウ兄! マリ姉は!?」
/1421ページ

最初のコメントを投稿しよう!

216人が本棚に入れています
本棚に追加