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序章
……来た来た。
例の決まり文句だ。
「汝は、この男を夫と認めますか?」
しんと静まり返った礼拝堂に、いつもの質問がいかめしく響いた。
おれはこの礼拝堂の玄関口の脇から、奥の方をじっと見てみる。
この知らない人の“婚礼の儀式”には、たくさんの人が参列している。
でも何列にもきちんと並んだ横長の席に行儀よく座っていて、立っている人はいない。
突っ立つ俺には、視界良好だ。
礼拝堂の一番奥、見慣れた“純愛の神”アモーラの祭壇の前に立つのは、見慣れた司教(ビショップ)さまだ。
でも今日ばかりは、見慣れないキンキラキンの法衣と法冠を被ってる。
その右に立つのは、まぶしいくらいに真っ白な婚礼衣装のお姉さん。
司教さまの決まり文句の質問に、お姉さんが赤い顔でこくりとうなずいた。
「……はい、認めます」
司教さまは、今度は左のお兄さんに聞く。
お兄さんが着てるのは、やっぱり純白の婚礼服だ。
「汝は、この女を妻と認めますか?」
「はい、もちろん」
……ここで『認めません』なんて言ったら、どうなるんだろ?
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