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ああ、いい匂い……。
やっぱりマリ姉の顔をまともに見れないおれは、空に目を逃がした。
そろそろ夜が近いっぽい。
横目にチラ見すると、マリ姉はせっせとゴミを集めるルミとテオじいさんを見つめていた。
「他者のための行為は、たとえゴミ拾いでも、とても崇高なものです。他人の目にはどう映ろうと」
そう言って、すっとおれに向き直ったマリ姉が、清らかに微笑む。
「あなたも迷わずお手伝いすればいいのに、クロ」
おれはうつむいた。
何とも返せないまま、おれはつま先を軽く睨んで、関係のない質問をマリ姉に飛ばしてみる。
「あ、で、マリ姉は、何でここに? ルミに用とか?」
「いいえ」
話を戻される、と思ったところが、意外にもマリ姉が普通に答えた。
顔を上げたおれに、マリ姉がはっきりと言う。
「あなたを探していました。クロ」
どきん、と心臓が躍った。
おれは戦士の修行中で、マリ姉の騎士団に出入りしている。
マリ姉から稽古をつけてもらうこともあるし、騎士団の任務にくっついていくことだってある。
でも、いつもおれからマリ姉に無理を言ってお願いしていることばかりだ。
それが、今日はマリ姉がおれをさがしてくれてるなんて……
「お、おれを? な、何で?」
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