第十四章 訓えの終焉

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 防御が崩れたカレ兄の肩口に、倒れる櫓のような巨大な刃が、ざくりと斬り込む。  けれど業物の頑強な胸甲は、巨剣の一撃をがちりと受け止めた。  深いひびこそ刻まれたものの、体の方は無傷のようだ。  さすが、シルク姉さんがカレ兄のために選んだ古えの逸品だ。  しかしカレ兄を斬り損ねた巨剣は、再びカレ兄の頭上高くに浮き上がる。  ――滅びよ、まつろわぬ者め――  怨念に満ち満ちた地鳴りが、張り詰めた空気と地面を揺らす。  そして櫓のような黄金の巨剣が再びカレ兄に撃ち下ろされた瞬間、シルク姉さんの右手が巨剣を指差した。 「モーリーン! ゴウデンス!!」  かつてない声量と不屈の語気、それに揺るぎない気迫に満ちた結句が放たれ、カレ兄の脳天を襲った巨剣の刀身が、バラ色の閃光に包まれる。  と、息つく間もなく、シルク姉さんの張り詰めた声が、結句の続きを大剣に叩き込む。 「カム! マクシマム! ヴァローレム!!」  追い打ちの聖句に、鮮紅色の光は低く唸る小さな太陽へ変貌する。  まだ距離のあるおれの顔さえちりちりと灼けるほどの、途方もない熱量だ。 その目も眩む白金の輝きが鋒(きっさき)から柄頭(つかがしら)を覆い尽くした瞬間、黄金の巨剣は、煌めく粉塵と化して爆散した。  同時に目を潰す閃光と凄まじい熱、それに聴覚を消し去るほどの大音響が巻き起こり、カレ兄とシルク姉さん、それに倒れたマリ姉まで……!
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