第十四章 訓えの終焉

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 その爆炎の中に、左の掌を高々と差し上げたシルク姉さんのシルエットが浮かんだ。  そして狙っていたかのように、力強い祭文が猛り狂う性素爆炸(オルゴン・バースト)に再びの追い打ちをかける。 「……エト! アード! カイラーム!!」  周囲を覆いかけた星屑のような粉塵が、渦を巻いてカレ兄の前に凝縮する。  めらめら燃えるその掌サイズの太陽からほとばしった一筋の光が、天を衝き上げた。  プラチナ色の光は、カレ兄たちの遥か頭上で大きく広がり、激しくうねる竜巻へと姿を変える。  宙に浮いた無数の瓦礫を弾き飛ばし、薄い雲を貫いて大穴を穿つ。  シルク姉さんが創った壮大過ぎる光景は、この空間に居合わせる全てを圧倒する。  おれの足も、法王驢馬(バプスト・エーゼル)の石の顔さえも。  けれど十秒としないうちに、煌めく竜巻は忽然と消え失せ、後には雲と瓦礫の消え失せた透明な空間が残された。  そこでおれはようやく気付いた。  ……ああ、そうか。  シルク姉さんは、最後の結句で爆炎を上空へ逃がして、カレ兄たちを護ったのか……。    そのシルク姉さんの膝が崩れ、両手を地面に着いた。  ハッと振り向いたカレ兄に、シルク姉さんは気丈に首を横に振る。 「私より、マリッサさんを。は、早く……」
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