第十三章 約束の六人 ――法王驢馬と牛坊主――

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 十七 「うわっ!」  思わず声を上げた次の瞬間、不安定な姿勢のまま、おれたちは水面のように激しく波打った地面へと叩き付けられた。 「ぐ……」  雲衝く鐘楼から墜落したかのような、途方もない衝撃。  骨が軋んで肺がしぼみ、全身を隅々覆う痛みに目が霞む。  その霧がかかった視界の中に映ったのは、ザグナルの刺さった胸元から噴き出す、マリ姉の紅い血しぶき……。 「あっ! ダメっ!」 「マリッサ!! 畜生め!!」  ルミとクロウ兄の悲痛な叫びが、耳鳴りの詰まったおれの鼓膜を痛打する。  必死の形相のクロウ兄が、誰よりも早く跳ね起きた。  なりふり構わずマリ姉に跳び付き、出血が止まらないその体を堅く抱き留める。 「やめろ!! ホントに死んじまう!! この、人非人(ひとでなし)!!」  掠れた罵声とありったけの憎しみを込めた視線を法王驢馬(バプスト・エーゼル)にぶつけたクロウ兄。  あちこちに亀裂の入った白い柱体の上から、石の顔がおれたちを見下ろしてくる。  くらつきつつも身を起こしたおれの頭に、奇妙な違和感が逆棘のように引っかかった。  ……法王驢馬(バプスト・エーゼル)に亀裂?   何で……?
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