第十三章 約束の六人 ――法王驢馬と牛坊主――

161/165
211人が本棚に入れています
本棚に追加
/1396ページ
 刹那、法王驢馬の巨体が、ずずんと激しく震えた。  耳をつんざく大音響とともに、自分の柱体をぴしぴしとひび割りながら、大地を激しく揺るがす。  さらに強烈な大地震が、おれたちの体を一斉に撥ね上げ、のたうつ地面へと叩き付ける。  呻きを洩らす暇さえ許されず、続けざまに三度、四度と湧き起こった“大地震”が、おれたちの体を狂ったように乱高下させる。撥ね上げては叩き落し、また撥ね上げて……。  おれは地割れに覆われた地面の上に打ち棄てられた。  意識も感覚もめちゃくちゃで、腕も脚もちゃんとついているかさえ、はっきりと自覚できない。  けれど、だらしなく倒れたままのおれの服と胸甲が、びりびりと震えるのをわずかに感じる。  勝ち誇った傲慢さと、限界の疲労感に満ち満ちた重低音のため息だ。  身じろぎひとつ許されず、投げ出されたままのおれの霞んだ目に、白い巨柱がぼんやりと映る。  壁面がぼろぼろにひび割れた法王驢馬の姿は、もういつ倒壊してもおかしくないだろう。  ……ああ、そうか。  あの大地震は、衝撃波は、自分の体を削って放った、捨て身の攻撃なんだ……。   ぼんやりと勘づくおれの耳に、低い地鳴りの声が響く。 ――己(おの)が無力を思い知れ、我が大義を蔑みする愚か者ども。大過のない幸いの境地へ人間を導く我が大愛の下(もと)に、須らく滅びよ――
/1396ページ

最初のコメントを投稿しよう!