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刹那、法王驢馬の巨体が、ずずんと激しく震えた。
耳をつんざく大音響とともに、自分の柱体をぴしぴしとひび割りながら、大地を激しく揺るがす。
さらに強烈な大地震が、おれたちの体を一斉に撥ね上げ、のたうつ地面へと叩き付ける。
呻きを洩らす暇さえ許されず、続けざまに三度、四度と湧き起こった“大地震”が、おれたちの体を狂ったように乱高下させる。撥ね上げては叩き落し、また撥ね上げて……。
おれは地割れに覆われた地面の上に打ち棄てられた。
意識も感覚もめちゃくちゃで、腕も脚もちゃんとついているかさえ、はっきりと自覚できない。
けれど、だらしなく倒れたままのおれの服と胸甲が、びりびりと震えるのをわずかに感じる。
勝ち誇った傲慢さと、限界の疲労感に満ち満ちた重低音のため息だ。
身じろぎひとつ許されず、投げ出されたままのおれの霞んだ目に、白い巨柱がぼんやりと映る。
壁面がぼろぼろにひび割れた法王驢馬の姿は、もういつ倒壊してもおかしくないだろう。
……ああ、そうか。
あの大地震は、衝撃波は、自分の体を削って放った、捨て身の攻撃なんだ……。
ぼんやりと勘づくおれの耳に、低い地鳴りの声が響く。
――己(おの)が無力を思い知れ、我が大義を蔑みする愚か者ども。大過のない幸いの境地へ人間を導く我が大愛の下(もと)に、須らく滅びよ――
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