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すぐ背後で、わずかに砂が鳴った。
深い吐息にのって、かすかな言葉が届く。
「……『大愛』?」
ルミだ。
「あなたは、大昔の法王さまは、『大愛』の言葉の下に、たくさんのひとたちを、死なせてきたんでしょ? その柱の体を造った、たくさんの他の法王さまたちも、アケロンテ教団のひとたちと、逆らったひとたちも、それに侍従の、ネイガー師まで……」
消え入りそうに儚げで、それでいて真っすぐ芯の通った声音。
全身を砕く苦痛に耐え抜いて、途切れ途切れに綴るルミの言葉だけが、静まり返った空間に静かに染み渡る。
「大過のない幸いの境地? わたしたちを導く? 本当に、それは、わたしたち人間のため? もし、その想い自体が、法王さまだけのためのものだったら、たくさんの命を犠牲にしないと実現できないようなものだったら……」
血を吐くような悲痛な叫びが、静寂を衝き破った。
「そんなの大愛なんかじゃない! 絶対絶対、絶対、間違ってる!」
ルミの魂の訴えに、法王驢馬の顔色が変わった。
柱体をわなわなと震わせて、歯噛みする石の顔には、ないはずの青筋さえ浮かんで映る。
野獣のように、言葉にならない吠え声を上げた法王驢馬の白い柱が、ずずずっと揺れ始めた。
これまでよりも、さらに激しく。
……来る!
くそっ……!
そして衝撃波を放ったその瞬間、ばかん、と濁った音が低く響いた。
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