第十三章 約束の六人 ――法王驢馬と牛坊主――

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 ……そうだ。  法王驢馬(バプスト・エーゼル)のあの喉元は、怠惰の神の法王がわざと何もしなかった、あの柱の唯一最大の急所なんだ。  一つの図面から造られた牛坊主(メンヒス・カルプ)と同じように……!  地面に投げ出したおれの手足の先に、じんわりと熱が戻ってくる。  震える腕と脚に渾身の力を込めて、胸と腹を地面から引き剝がす。  幸い、“城(ル・シャトー)”の武器庫でルミが選んでくれた頑丈な胸甲が、おれの肋骨も肺も大地震の衝撃から護ってくれた。  まだやれる。  いや、今、この時しかない。  おれは右手が最後まで放さなかった棍を、地面へと突き立てた。  そして握りしめた棍を支えに、再び立ち上がる。  でも、立ち上がれたのは、おれだけだ。  ルミも、大剣を受け止めたカレ兄と、法術を放ったシルク姉さんも。  それに瀕死のマリ姉を守るクロウ兄も、双角獣のニムロデさえ、地面に横たわったまま微動だにしない。  けれど、おれたち“約束の六人”をここへ立たせてくれたひとたちのためにも、おれまで倒れるワケにはいかない……!
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