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誰もが深手を負ったこの状況で、おれが打てる手立てはただ一つだ。
そのたった一つの頼みの綱を探して、辺りに視線を巡らせた。
が、大地震で引っ掻き回され、瓦礫だらけの地面には見当たらない。
きょろきょろするばかりの数秒の隙に、法王驢馬(バプスト・エーゼル)の深い吐息が響いてきた。
石の両眼の焦点が戻り始め、空気の流れが怪しく変わる。
同時に、散乱する瓦礫がかたかたと揺れてくる。
……くそっ!
アレはどこに……!
積み上がる焦りに気持ちが呑まれかけた、その時だった。
どこからか、何かを引きずるような音が聞こえてきた。
そして間髪容れず、おれの頭の中にガツンと踊ったのは、朱色の力強い文字だ。
『しっかりなさい、ボクちゃん!』
この脳裏に踊る遠慮のない文字が、おれの萎えかけた心の芯を瞬時にピンと張り直す。
熱く揺らめく目を、音の近付いてくる方へと向けた。
と、視界に映ったのは、ニムロデが乱入してきた空間の裂け目の方から猛然と這いずってくる、真っ黒な物体だ。
埃まみれの黒いぼろ布のにも、タールの汚泥のようにも見える。
でもおれの口が、その正体を勝手に叫んだ。
「グルマルキン!!」
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