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怨霊ネイガーを捕えていたカレ兄の顔に、畏れの色が浮かんだ。
光の鉄条網を掴むシルク姉さんも、割れた眼鏡の奥で目を見開いている。
おれの耳元に、ルミの驚きに満ちたつぶやきが届いた。
「あれって、フィーニース……!?」
カレ兄たちが怯んだその一瞬の隙に、二つの怨霊はカレ兄たちの腕と法術からするりと抜け出した。
「うっ!?」
カレ兄がたった一つの呻きを洩らしたその刹那、兜の白い羽飾りを翻し、風よりも早く身を反した甲冑の女が、逃げ去る怨霊の前に立ちはだかった。
と見るや、赤い断頭斧が無情に閃く。
紅色の稲妻にも似たジグザグの軌跡を、ばちばちと虚空に曳いて。
血も凍るばかりの絶叫とともに、怨霊ネイガーはめきめきと生木を裂くように両断された。
反す真紅の一閃が、さらに黄色い怨霊を横殴りに鈍く斬り裂く。
傍らで立ちすくむもう一体の怨霊もろともに。
ぼとぼとと地面に落ち、激痛に呻く幾つもの黄色い塊を見ながら、おれはふと思う。
……鈍い刃物で無理やりに斬られたら、その苦痛は拷問にも等しいだろう。
でも、何千年もの間、数えきれないほどの人を殺してきたヤツらなんだから……。
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