第十四章 訓えの終焉

102/108
前へ
/1457ページ
次へ
 怨霊ネイガーを捕えていたカレ兄の顔に、畏れの色が浮かんだ。  光の鉄条網を掴むシルク姉さんも、割れた眼鏡の奥で目を見開いている。  おれの耳元に、ルミの驚きに満ちたつぶやきが届いた。 「あれって、フィーニース……!?」  カレ兄たちが怯んだその一瞬の隙に、二つの怨霊はカレ兄たちの腕と法術からするりと抜け出した。 「うっ!?」  カレ兄がたった一つの呻きを洩らしたその刹那、兜の白い羽飾りを翻し、風よりも早く身を反した甲冑の女が、逃げ去る怨霊の前に立ちはだかった。  と見るや、赤い断頭斧が無情に閃く。  紅色の稲妻にも似たジグザグの軌跡を、ばちばちと虚空に曳いて。  血も凍るばかりの絶叫とともに、怨霊ネイガーはめきめきと生木を裂くように両断された。  反す真紅の一閃が、さらに黄色い怨霊を横殴りに鈍く斬り裂く。  傍らで立ちすくむもう一体の怨霊もろともに。  ぼとぼとと地面に落ち、激痛に呻く幾つもの黄色い塊を見ながら、おれはふと思う。  ……鈍い刃物で無理やりに斬られたら、その苦痛は拷問にも等しいだろう。  でも、何千年もの間、数えきれないほどの人を殺してきたヤツらなんだから……。
/1457ページ

最初のコメントを投稿しよう!

219人が本棚に入れています
本棚に追加