第十四章 訓えの終焉

106/108
前へ
/1457ページ
次へ
 パッと手を放し、慌てて辺りを見回したおれたちに、女給姿のラウヒェンが荒れ地の一隅を指差した。  示した先を目で追うと、白んだ空気の中に座り込む男の背中と、その前に横たわる影が見える。  おれとルミ、それにカレ兄とシルク姉さんも、急いで二つの人影に駆け寄った。 「マリ姉!!」  マリ姉は、地面にあお向けていた。  砂にまみれた顔は蒼く、目は静かに閉じられている。  胸には、まだネイガーのザグナルが刺さったままだ。  結界が消し飛んだ衝撃でも抜けないなんて、よほどしっかりと胸甲に食い込んでいるんだろう。  そんなマリ姉の前に座り込み、うなだれたクロウ兄。  力を失った両肩も、無理やりに引き結んだ口元も、震えて見えるのは気のせいじゃない。  カレ兄が、クロウ兄の横に静かに片膝を着いた。 「マリッサは……」  口にしかけたカレ兄の言葉が、クロウ兄の怒声に打ち消された。 「やめろ! それ以上言うな! 言っちまったら、本当に……」
/1457ページ

最初のコメントを投稿しよう!

216人が本棚に入れています
本棚に追加