終章 ――今まで、これから――

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 ――パビアの崩壊――  三つの神に選ばれた俺たちは、“約束の六人”としてこの塔から旅立ち、三つの聖霊に導かれ、宗教都市パビアの地下に何千年も潜んでいた法王驢馬(バプスト・エーゼル)と牛坊主(メンヒス・カルプ)を死闘の果てに討ち果たした。  そして奴らが画策した“大断絶計画(グランド・アイソレーション)”は終焉を迎え、数千年も続いた“霧の呪い”も消え失せて、人間は自分の魂の声を取り戻した。  こうして三つの神々と聖霊たちの悲願、それに何よりも、シルク姉さんとカレ兄と、おれとルミが守り抜いた“アケロンテ教団”は、何千年もの時を経て、ついにその役目を全うした。  けれど、あらゆる神の寺院と神殿がひしめく宗教都市パビアは、法王驢馬と牛坊主の消滅とともに焦土と化し、全ての建物と住民の命の大半が失われた。  その“パビアの崩壊”と呼ばれる大惨事から、すでに六年近くが過ぎ去った。  台座に映る十八になったばかりの自分を見ながら、小さく息をついた時だった。  風に乗った低い声が、俺の耳元に届いた。  俺がよく知る渋く落ち着いた、懐かしい声音だ。 「ここにいたのか、クロ」
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