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シルク姉さんとカレ兄が、同時にうなずいた。
口元にかすかな笑みを湛え、カレ兄が静かに綴る。
「ほとんど焦土だった荒れ地も耕され、小さな農村に近い佇まいを見せてきた。だがまだ完全な自給自足には至らず、村として運営できる状況とは言い難い。さらには再び建ち始めた旧い祠堂もある。陰に日向に再建の中枢を担うダンテス師は、実に多忙でパビアを空けられない。いつに変わらず、矍鑠(かくしゃく)としてはおられるがな」
俺は聞えよがしに、大きく息を吐く。
「あー、吹っ飛んだ寺院と神殿も、信者が建て直したのがあるんだっけ。俺たちが死ぬ思いで、旧い訓えを終わらせたのに……」
ふふっ、というシルク姉さんの柔らかな息が、俺の零した不満をそっと包み込む。
「わ、わ、私たちの“アケロンテ教団”は、や、使命を終え、か、解散しました。わ、私自身も、内陣首座(イプシシマ)の地位と、あ、アマトリアの守護を、て、て、手放しています。 二、ニムロデや、カ、金剛歓喜天(カタフラクト・ラグジール)の、み、みなさんは、ざ、残念そうでしたが」
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