終章 ――今まで、これから――

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 パビアの崩壊後、荒れ地に最初に建ったのは救貧院だった。  同時に、生き残った人々は最初の寄る辺として、純愛の神アモーラの祠堂を望んだ。  そして救貧院を守護し、また祠堂で祈りを司る者として、テオ爺さんはマリ姉を招いた。  かつてのエウローラ聖騎士団のように。  ルミはと言えば、やっぱテオ爺さんに呼ばれて救貧院で働いている。  マリ姉の話し相手を務めながら。  月に一度の任務でパビアへ行くたびに二人にも逢っていたから、つい先月まで元気だったのは知ってるけど……。  つい思い返すおれの耳に、カレ兄の苦笑が届く。  けれどそれは、気遣いといたわりに溢れた温かな息だ。 「そうだな。マリッサも祠堂と救貧院に身を置きつつ、まだ旧い訓えと己の魂を見つめ直している。ダンテス師とルミナ、それにクロウに見守られながら、な。あれから月日も経った。もう気持ちの整理も付く頃かも知れないが。それで、お前の方はどうだ? クロ」  口許で笑みながら、カレ兄が俺を正視する。 「ベイ総帥(グランド・マスター)に請われて“城(ル・シャトー)”に身を置き、すでに六年。ここの水にすっかり馴染んでいるのだろう?」 「あー、うん、そうだね。ぼんの誘いもあって、結局アゴンに居ついちゃってる。クロウ兄と同じ組織の冒険者部局に入って、ついこの間、第五階戦士の“護士(フェンサー)”になったよ。イーサーさんの交易・流通部門が運ぶ物資の武侠(バウンセル)が今の主務だから、月一でパビアへも隊商(キャラバン)の護衛について行ってる。“ぼん”は、今は総帥を降りて、冒険者部局の局長に戻ってるけど」
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