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なんて素朴な疑問は口に出さず、おれはおとなしく結婚式の見物を続ける。
祭壇の前で、司教さまの両手が、向き合う新郎新婦それぞれの片手を取った。
「今ここに、二人の男女は純愛の神に導かれ、一つの道を往かんとす」
これも純愛の神の寺院でやる結婚式の決まり文句だ。
この後、”絆の儀式”があるハズ。
あいつはどこに……?
と思っていたら、やっぱりそこにいた。
司教さまの陰からちょこんと現われた、侍僧(アコライト)の女の子。
両手で捧げ持つ銀のトレイには、まだ結ばれていない赤いリボンが載っているハズだ。
……ルミのヤツ、自分の結婚式でもないのに、真っ赤な顔してる。
ワケが分かんね……。
なんて思っているうちに、司祭さまが新郎新婦の手を重ね合わせた。
その手と手の上に、司教さまがルミのトレイから取った長いリボンを巻きつけていく。
”絆の儀式”だ。
この結婚式も、もうすぐ終わる。
やがて新郎新婦の手に巻いたリボンをちょうちょ結びにして、司教さまが高らかに宣言した。
「斯くして、二人の絆は結ばれぬ。”樹上”に還る宿命の日まで、共に同じ道を往かん。純愛の神の庇護の下に……」
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