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男がひとり、湖畔へと向かった。昼間のように明るく照らす満月を肴に、一杯ひっかけようという魂胆だった。
湖畔へたどり着くと、すでに先客の初老がいたが、男はその初老の事を妙に思った。
初老も同じように酒を持ち込んではいたのだが、その男が眺めていた月は空のものでなく、湖に浮かぶものであった。
不思議でたまらなくなった男は、初老の元へと歩み寄った。
「もし、ご相席してよろしいでしょうか?」
「勿論構いませんとも。このような月ですから、独り占めとは致しません。
もとより私は、この月の事はあまり好きにはなれないのです」
話そうとすると、この初老が難解な性格であることを知ることが出来た。初老の不思議は、深まるばかりである。
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