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垂れ幕事件
「……どうかな?」
「うん。すごく良いと思う」
「遠慮しないで、正直な感想言っていいよ! 結菜ちゃんが思ってること全部!」
昼休み、文集の最初に載せる予定の詩を穂乃花ちゃんに見せてもらった。添削してほしいと言われたけれど、私には校歌をイメージした素晴らしい詩ということしかわからない。
同じく話を振られた一ノ瀬くんが、転校生という立場から客観的な感想を述べている。熱心に頷く穂乃花ちゃんは、真剣な眼差しだ。
時折、思い出したように横髪を耳にかけている。その仕草は、同性の私から見てもドキッとするほど大人っぽかった。
なんてお似合いの二人なんだろう。穂乃花ちゃんも一ノ瀬くんも頭が良くてしっかりしているし、お互いに本が好きという共通点もある。私なんかよりもずっと、一緒にいて楽しいはずだ。
耐えきれずに目を背けて、私は自分の席に戻った。
勝手に想像して、勝手に傷つくなんて馬鹿げている。
「この最後の部分がどうしても気になってて……何か別の表現にした方がいいかな?」
「僕はこのままでもいいと思うよ。多田先輩らしさが出てるし」
険しい表情を崩さない穂乃花ちゃんが、最後の部分を口に出して読み上げた。私たちがいくら太鼓判を押しても、当の本人が納得できなければ意味が無い。
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