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「穂乃花ちゃんは……すごいよね」
「どうしたの? 急に」
「私だったら、もう全部面倒になって放り出してるかも」
「そんな事したら、また幽霊を怒らせることになっちゃうよ」
「幽霊?」
私と穂乃花ちゃんの会話に入ってきた一ノ瀬くんが、興味深そうな視線を向けてくる。
大した話じゃないんだけど、と言い渋る私に、首を振って否定したのは穂乃花ちゃんだ。あれはミステリーだよ、と断言し、机に両手をついて立ち上がった。
「里山小学校で起きた、最初で最後の大事件なんだから」
今から一年と少し前の記憶が、ふつふつと蘇る。
「あの日は、雲ひとつない快晴だった。風もなくて……本当に穏やかな、廃校式に相応しい朝だった」
しんと静まりかえった教室に、穂乃花ちゃんの声だけが響く。まるで怪談話でもしているかのような、神妙な語り口だ。
「準備に関わってきた小学校の児童と、手伝いにかり出されてた私たち中学校の生徒たちは式の前から集まってて、先生たちもみんな忙しく働いてた。事件は、突然起こったの」
ごくりと、喉を鳴らす一ノ瀬くん。
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