真昼の幽霊

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「ゆーなー!!」  窓辺に肘をついて悶々としていたところに、聞き慣れた呼び声がかかる。下を向くと、一年生の大杉海斗が花壇の側で大手を振って跳ねていた。短い髪と、季節を問わず焼けた肌は昔から変わらない。 「カイ、なにやってんのー?」 「写真係ー!」 「偉いじゃん。リクは?」 「たぶんプールの方! 良い場所がないかリサーチするって言ってた!」  少し大きめの学ランの袖をまくって、備品のデジタルカメラをかかげるカイに、私はがんばれとエールを送る。貼り付けた笑顔の裏側では、言葉にできないほどの疎外感を感じていた。 「今、プールって言った?」  ふいに駆け寄ってきた一ノ瀬くんが、急いで窓から顔を出す。しかし花壇の側を離れたカイには、もう声が届きそうになかった。  同じくらいの身長だと思っていたけれど、こうして隣に並ぶと一ノ瀬くんの方が少しだけ高い。  ちょうど、三センチくらいだろうか。  私の左半身が、やけに緊張している。  身近にいる男子は、今までリクとカイだけだった。二人は物心がついた頃からずっと一緒だったし、うるさくてやんちゃだし、私よりも背が低い。声変わりもまだだから、同性同士の友達みたいな感覚だった。  一ノ瀬くんは何もかもが違う。  柔らかくて低い声も、少し高い身長も、物静かで落ち着いた佇まいも。
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