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第壱章 【有から無、無から有】~ゼロマスター~ 第1話「経営難」
全ての人間は光と闇をもっている。
この二つの使い方を人間は誰も教えてくれない。そして、無意識に生きる上でも、学術でもこの存在を知り学び、自然と使いわけている。
だが、だれも正しい使い方を知らない。
なぜなら“正しい使い方”と言うのは、そもそも正しいという判断による秤を目安にするからだ。
人それぞれによる使い手側の価値観と住んでいる環境によって、心の中の多数決と政治などの時代背景で決まる。よって、真実を見失いやすくなり、人は愚かであり続けてしまう。
但し、幸せの感じ方は別だ。
それは光と闇を使い分け続けた結果であって、その人間、その時の価値観によって、真の幸せの感じ方が変わるからだ。
しかし、その評価は第三者の判断により、個人の幸せとは善悪が決まる。
つまり、本当の正しい使い方なんて誰も知らないし、そもそもこの“正しい”という概念さえ歪めることが出来てしまうのが、光と闇の存在である。
あなたのもつ、善と悪は本当に幸せの善と悪ですか?
ここに、とあるサンプルのお話があります。
それが今回の主人公が紡ぎ上げてきた人物史のお話です。
おっと!これは弊社の企業秘密ですよ……?閲覧するには“覚悟”が必要です。
あなたの価値観を変えてしまうかもしれませんからねぇ!?
あなたも物好きだ。さぁいきたまえ!!
フッフッフッ……!!
カタカタカタ…ヴォン!
Are You READY??
プシューィィン!!
「マスター?」
「ん?どうした?」
「今日のテスト、微妙だった(泣)山が外れたー!」
「まぁどんまいだなw明日から授業ちゃんと受けて来いよ~」
「マスターはいいよなぁ社会人ってテストないもんなぁ」
「あのなぁ…」
俺は33歳、事務職のしがないサラリーマンだ。定時に出社し、定時で帰路につく。いわゆる自宅と会社の往復するただのサラリーマンだ。
特に何もない。彼女もいないし、結婚もしていない。かといって貯金もこのご時世なのでほぼない。あるのは、一時の寿福感を得るために、時たまゲームに課金したり、パチンコやスロットを嗜むほど。
経歴は、現役でそこそこ有名な大学合格の後に、一流企業に就職しバリバリの営業マンで最年少で課長だった。しかし、会社の派閥争いに負けてしまい、それを機に疲れてしまった。
一流企業をやめ、細々と個人工務店の事務職で仕事は片手間、定時まで適当に過ごす“サボリーマン”をやっている。
無論、給料も営業マン時代のように華々しい給料を得ているわけでもなく、ほぼ最低賃金クラスの給料でのらりくらりと夢も希望もなく日々ネトゲ準廃人のような生活スタイルをしている。
そんな俺にも多少の淡い楽しみがある。それがMMORPGでギルドマスターをして色々なギルドと戦い、ギルドの長となるギルドマスター“なんかすごいギルドマスターになりたい”というなんとも抽象的な幼稚じみた陳腐な思いがある。
Ilias(イーリアス)
そう、全世界でMMORPGのゲーマーから支持されている5年連続部門№1のゲームだ。主な主要国にサーバーを持ち、独立したフルダイブ型VRMMORPGだ。
特にこの日本はテストサーバー扱いされる。それは有能なプログラマーを有する日本経営陣のおかげでもある。
NA(ノースアメリカ)サーバーも優秀ではあるが、日本プレイヤーが日本人独自の物事を突き詰めて個々のデータを採取し、デバッカーのようなデータを叩き出してくるので、新しいコンテンツは先駆けて日本サーバーへのサービス提供をしてくれる。
俺個人としては、プレイヤーとしてうれしい仕組みだ。まぁそのゲームではしがないギルドを立ち上げている。いちプレイヤーとしてはそこそこのランカーではある。
なぁに毎日クエストをこなし、敵を倒していれば、成長ランクぐらいには食い込めるわけだ。これも、日々毎日飽きずにやれてしまう己のサガのせいでもある。
おっと、自己紹介が長すぎた。俺のプレイヤーネームはセイメイ。
セイメイは、あの安倍晴明からとった。響きも簡単だし、それでいて先人達のおかげで親しみやすい偶像であったためである。
イーリアスは色々な人種や職があり、中でも異国からの流れ者という設定で色々な武器を使える職業を選んだのが、見た目が侍風の武人を気に入って選んだ。
総じてMMORPGのプレイヤーの大半が現実の男で挙(こぞ)って自分の好みの女性を投影できるので女性キャラが多いが、俺は自分を投影する自己投影型なのでコイツを選んだ。
やっぱ武人は古代中華も戦国日本もかっこいいよな!セイメイで、サムライというのはどうなのかというツッコミはなしだ!
無論、主人公キャラポジションの戦士キャラ勇者ぽいキャラというのは存在するが、それは西洋の騎士であるので俺は東洋の騎士、「武士」“サムライ”を選んだ。
西洋の英雄は騎士という定番はどうも苦手だ。それはありきたり過ぎる。また、とても偉人達が描いた英雄譚の英雄たちと自分を重ねる事は恐れ多いと自分は思っているからだ。
また、海外からも人気のあるサムライを選んだ理由の一つ。
かの有名な“日本のクロサワ”にインスパイアされたという、星の戦争に出てきたダークサイドの黒い人の来ているアーマーは、サムライの鎧兜をモチーフにしたというのは有名だ。あのシリーズは年を重ねた今でも心を揺さぶられる。あの製作監督のハリウッド映画は最高だ。
中世の時代風景の世界観で異国文化の人物が立っているという“クロスカルチャートラップ”が、ライトノベルシリーズの影響を受けている人々の一人である自分が、そこに立っていたいと思える描写がほしいという側面もあった。
イーリアスはキャラメイクの自由度が幅広い。たまにキャラメイクグランプリを全世界を巻き込んで、プロアマ問わず、応募できたりする。ユーザーが思い入れしやすさという面ももつタイトルでもある。
さて、今日もうちのギルドでのVC(ボイスチャット)が騒がしい。
「Aに対してのBの与えダメはこのエリクサーを飲むことで15%増えるんだぞ?討伐速度が上がれば、相対的に時給計算したとき、それはペイされるんだから作るか買ったほうがいい!」
「マスターもそう思うでしょ?」
サブマスターのディアナ、若きリーダーの♂だ。職は♀エルフ。アニメヲタク25歳。
俺と違ってエリートコースなのに趣味に没頭している。お金持ちなのにケチらしい。ガチ勢に近い考え方で後発の新人達を育成をしている。根は悪い奴じゃないんだが口が悪い。
戦争では後方からの全体攻撃が得意。接近戦では短剣の二刀流になる。対人戦をすると面倒な職。装備制限があるが、職業専用武器がある。ギルド運営に関してもディアナは頼りにはなる。
「あーやるかな~!」
ギルドメンバーのユーグ。典型的な中二病ぽい『俺が主人公だ』の陽キャ系。学生21歳彼女あり、職業はウォーリア。洋式の武器が使えるが、ただし弓は使えない。成長するスピードに悩んでいる。ときたま、空回り。
「あれ?暇なら一緒に討伐いくか?」
「ソロモンさんお願いします!!」
彼の名はソロモン。ネーミングセンスから察しがつくが魔導師だ。ありとあらゆる魔法を取得できる。噂では高レベルで条件付きのアイテムを装備すると禁忌の魔法を取得できるとのもっぱらの噂の職業だ。クエストも険しいらしい。
近距離攻撃・個人戦に弱い。でも強い!矛盾してやがる!仕様おかしいだろ!現実はどこかの社長のおっさん。バツイチ。面倒見がいい。
「マスターぁ!一緒に手伝ってぇ~!」
「くっ…!マリアか!」
マリア、ソロモンとは違いウィッチである。某広告型配信サイトでは常に上位にランクイン。可愛いっちゃあ可愛いが俺の範囲ではない。
19歳ニート?これニートといえるのか?動画収益で一番収入ある人物だ。とある事でうちに所属することになった。影響力もあり、信者がうちに入ることが多々ある。
まぁあれだ。俺はつかず離れずの関係を築いている。召喚魔法を得意とし、オールレンジ型。唯一弱点は召喚中は詠唱中はどうしても後ろを取られやすい。
「えへ☆彡」
―――というか、これにやられる諸君らは幸せだな!!うちから離れてギルド設立すればいいのにw
ホルス・マノ・グラニ
♂エルフ・♀アサシン・♂ウォーリア
三バカと呼んでる。実力はそこそこ
その他に(信者が)いるが頭角を現すものがまだいないが相応して切磋琢磨に各々の冒険を楽しんでいる。それはそれで喜ばしい事ではある。
「聞いてる?マスター?」
「ああ、俺ちょっとやることがあって…信者に手伝ってもらいなよw」
「むぅ!…わかったわ」
「わりぃわりぃ次、手伝う!」
―――ふう…。ここで俺は実はものすごく深刻な状況が発生しているのだッッ……!!
ギルドメンバーが増えたことがすごく喜ばしい事なんだ。設立してからはのらりくらりと1年ぐらいだが、ここ数ヶ月で…現に40名前後が所属して、ほぼ9割が全員アクティブ。レイドボスなどのギルドイベントのボスなど開催しやすくなってはいる。
だが!!しかし!!その急激な増加により、圧倒的な給料未払いが発生しそうなのだッッ!!!
俺が必至こいて無双してモンスター討伐して稼げても、せいぜい駆け出しのギルメンを10名ぐらい配れればいい方だ。だけど、30名が未払いなるという始末!
やばいやばいやばいやばい!!! 非常にやばい!!!ギルメンが増えていきなり経営難なのだ!!!
リアルであればリストラをすることになるのだけれど、そうはできない!!
人がいなければ、ギルド同士の戦いもできないッッ!!
それに!!俺自身も強くなるにはお金がいるのだッッ!!課金してアイテムを売ることも考えたが焼け石に水レベル!!どうしよう!?
現実でも社長が社員などに給料未払いとか聞く話ではあるけど、まさか自分にそのフラグがいきなり立つとは!!!落ち着け!俺の今までのゲーム人生の経験を活かせ!!資金でレイドボスでレアアイテムを狙うか?
いやまてまて!!そんな博打はできねぇーッッ!!
それは運要素が大きすぎるッッ!!
ギルドクエストをこなすか?それには俺が一人で回すにしても効率が悪い上に時間が足りん!!そう頭を抱えているとディアナがギルド帳簿をみている。
「おいマスター、これやばくねーか?(汗)」
「みてしまったのか……!」
「いやだって、急に人が入ってきたら、ギルド資金を見て給料の払いが出来るかまず確認しないとなぁ?」
動揺を見透かすようにディアナはペラペラとページをめくっていく
「急に人が入ってきてくれておかげでこのザマだ……」
「というか、まずあれだな。ギルドクエストいくしかねーな!俺とマスターは出るとして、ソロモンとユーグが狩りを終えてからなんだけど、時間的に明日の夕方、街を出ないと厳しいぞ?」
「すまん、力がないばかりに迷惑をかける……」
「は?何言ってんの?ギルドはみんなでつくるものだろ?あんたがそういってたじゃねーか、ルールも原則自由、PKも個人責任、倫理的に人の道を外れたプレイさえしなければ、OKっていったのマスターだぜ?」
「そうだったな。狩場争いで戦うのは動物的本能だし、剣を抜いてない敵を後ろから討つなんて、武士道に反するからな?」
「相変わらず、武士道とか騎士道とかこのご時世やってるやついねーぞ?しかもゲームごときでw」
「そうなんだけどさ、なんつーか、ゲームくらい自分に正直でありたいって思うからw」
「それさ、自分に正直に見境なくPK(プレイヤーキル)してるやつにもいえるんだぞ?」
「わかってるさ、それでもこの理念は貫けるところまで貫いていきたいと思っている」
「まぁ……そんなバカ正直なとこが、信者勢含めて良いと思ってここに入ってるんだろうよ?募集要項もそうだしな……」
ふと、俺はギルドメンバー募集要項のページをめくり、しばし眺めていた。
「まぁギルドクエストの手続きを行ってくるわ!マスター、とりあえずギルド全体にお触れをだしておいてくれ!」
俺はギルド専用掲示板と声掛けをして、主要メンバーと数名でいくことになった。俺は装備確認と耐久回復の指示を出し、ディアナは攻略サイトやブログで情報収集を行なった。
ディアナは、本当に気が利く。俺自身ディアナに頼りにしすぎてる部分がある気がするが……。
出かける前にエリクサーや回復POTなどの最終確認は明日しっかりとやろう。
明日の討伐は久しぶりのギルド討伐クエストだ。
目標は【オーガ率いるMOB討伐ゴブリン狩り】中級レアドロ狙いしつつ、小銭を稼ぐ両面作戦だ。
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