第5話「銀世界(後編)」

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第5話「銀世界(後編)」

 グラフィックボードの演算でいくと画面が真っ白になるスキルと揶揄されているスキルだ。物理的な目くらましになるから、使う時は無駄に許可がいるスキルだ。  光度を下げるのを忘れていると本当にやばい。 「くぅうううう!!まぶし!!」 「ご、ごめんなさい!」 「いやいいんだけどね、いいんだよ。いいんだけど、声かけてくれるとうれしいなぁ…あははは」 「まったくどいつもこいつも!!!」 ディアナがぶつぶつ文句をいう。 「そんなしかめっ面ばっかしてるとお肌によくないぞ!」 ソロモンが背中を叩く。 「うぅるさい!!」というとディアナは膨れた。  おれらは爆笑した。 「いやぁ楽しいっすねマスター!狩りってこんなに楽しいんですね!」ユーグは声を上ずりながらいう。 「そうだな。定番のやり方も大事だけど、PTでオリジナルのコンボを生み出せるのも一つの楽しみだよな。効率でいうとPTの時点で同じだしなっ!」  ふと辺り一面を見渡すとゴブリンのPOPが消えて少し移動をしていたようだ。少し歩くと先ほどの先行していたPTメンバーが倒れており、一人が起きあがろうとしている。 「どうした?」と声をかけたとき、辺りが暗くなっていた。  いや、暗くなるはずがない。今日の天気は白夜だ。  ティロティロティローン  システム音と同時にシステムアナウンスが入る。  オーガ出現!  オーガ出現!  オーガ亜種出現!  目の前にはオーガの塊がそこには立っていた。 「おいおいおいおい聞いてないっすよ!マスター!!こんなにオーガでるんですか??」 ユーグはびびっている。 「マスター!ここは引きましょう!危険です!」ディアナは瞬時に危険を察知している。 「まて!」 「ソロモン!打ってくれ!」 「あいよ!」  ソロモンのグラビティヘイズを地面に打つ。  一瞬でオーガの足元に魔法陣が描かれて重力地盤が起きる。 「あぶねー!」 「てか、起きろ!おまえ!何が起きた!??」  俺らより先行していたPTの片割れが歯をガタガタしながら俺らにいう。 「みんな死んじゃった!ど、どうしよう!」 「準備してこなかったのか??」 俺は怒りと悲しみが入り混じった感情で彼を諫めた。 「一人忘れてて、そいつを起こすのに仲間が回復させていたら、後ろから回復させていた人を一撃で倒してしまったんだ。他の仲間は動けなくてその場でやられてしまい、自分は吹っ飛んできた仲間に倒されていた。」 「おまえら自分たちの装備でここにこれるようにしてたんだよな?」 俺は怒りが先行してしまった。 「格上狩りをしたいってみんなでいってて、それで…」 「それでこのザマか!!」 「ユーグ!!こいつにPOTあげろ!んで、PT招待してHP管理できるようにさせてくれ。」 「はい!!こっちにきて!」  彼はユーグと同じウォーリア職だ。盾スキルで身を守らせておけば、致命傷に至ることはない。 「さあて、お待ちかね!ボーナスタイムといきますか!!!」 俺は武者震いが起きた。手は汗ばみ、頭がかゆくなってきた。これが緊張状態というものか…。 「わかっているな?ディアナ!俺はこういうときあきらめが悪いんだよ!」 「知っている!さっさと注意を引いてくれ!精霊スキルを打つ!」  俺は三体に矢を打ち、俺のみにターゲットをとり、オーガ達に俺のカレント取りをさせる。 「セイクリッドランサーは覚えているか?クリス!!」 「大丈夫です!いけます!!」 「おし!バックアタックを取れたら、迷わず打て!!」 「ユーグ、オーラアタックいけるよな?」 「あと少しで打てます!」 「クリスと同時に放て!タイミングは任せた!」  にしても、オーガ二体に+(プラス)亜種とか俺らにいけるのか?  …迷っちゃダメだ。  こういう時は『突き進む』精神だ!! 「マスター受け取れ!!」  ソロモンが片手で詠唱し、俺にクイックタイムと鉄壁(ブレイブシールド)魔法を打ってきた。  体をよじりながら、受け取り付与された。  俺はケブネカイゼの氷美林を走り抜けていった。  ~ケブネカイゼの氷美林~ 「邪魔だぁ!!!!」俺は迷うことなく切り抜けていく。  自分が立てた作戦上、ゴブリンがわいてくる場所に身を投じている。後ろには亜種と二体のオーガその中でゴブリンの群れだ。  絶望的状況。お仲間頼りの作戦。まったく俺は甘えている。ギルドマスターは強くなくては仲間に馬鹿にされる。という概念が払しょくできない。  現実でもそうだ。結果を出せない奴に誰がついていく?実力のない奴が上に立った時どんな結末がある?  下をアゴで使い、己は私腹を肥やすばかりの社会だ。本当にリーダーってなんだ?人より上に立った奴が全部、法律(ルール)なのか?  違う!!  本当にトップに立つ奴は粛々と結果を出して自分一人で抜け出していて、下からは自然と頼りされるやつなのか?くっそ!そんな絵空事の主人公ポジのやつどこにもいねーよ!!  ゴブリンを倒しながら道を切り開いていたら、フィールドの限界まできてしまったようだ。目の前には山脈の急勾配の山が目の前にそびえたっていた。 「さぁてと。“背山の陣”(はいざんのじん)と行きますか!!!」  俺は武人の怒り(全パラメータ一時的に急上昇)を発動し、一気に叩き込みにいった!  走り込みと同時に袈裟斬り、逆袈裟斬り、刀で相手のガードを壊し、後ろをとって刺し技の三段突き。  すぐさま武器を持ち換えて薙刀でオーラアタック【炎舞(えんぶ)大車輪(だいしゃりん)旋風陣(せんぷうじん)】を範囲攻撃を打ち込んだ。  俺にとってはこれが今だせる最高のコンボとスキルだ。やったか!?  ぐぉおぉおおおおおお!!!!!!!!!!  くっ…。オーガ一体に膝着かせるくらいにしか出来んとは…!!  辺りは硝煙が消えかかった時、黒い影が俺の目の前で発する。 「マスターお待たせ!!!」  我が怒りよ、この剣に捧げる!! 「喰らえ!アルカ・すらああああぁぁぁぁシュ!!!!」  オーガ一体は横一線に上下にわかれ消えた。 「ユーグか!!助かったぜ!」 「俺も成長したっしょ!?」とにやりと笑う。 「だが、まだ二体いるぜ?そのうち一体は亜種だ。」と、俺がぼやくと 「あと一人忘れてません?」ユーグが歯を見せて満面の笑みを浮かべる。  聖なる光よ、我が槍に力を!! 「セイクリッドランサー!!!」  オーガと亜種の間を光の矢が走る!  オーガと亜種にバックアタックダメージが乗っかり、オーガは瀕死状態だ。 「おまたせしました。今はこれが限界です。ディアナさん達は間もなく到着します。」 「そうか、セイクリッドランサーの打つタイミング、良かったぜ!」  俺はPOTを飲みながら、いった。 「さてもう一息だ。」  傷ついたオーガ達を囲むように、ゴブリン共がわいてきた。  俺らはこのあと思いもしない出来事に巻き込まれていくのだった。  ~宵闇に瞬く白金(プラチナ)の拳(フィスト)~  ソロモンとディアナが俺らを追いかけてきている時である。 「ディアナよ、おまえさんここのギルドで楽しいのか?」 「なぜだ?」 「お前さんはガチ勢の気質がある。うちは正直、強いギルドではない。いずれなるかもしれんがな。でも今のお前さんの成長を止めている、足枷なんじゃないかとマスターと話していたことがある。」 「…。それは俺が感じていない以上、抜ける理由にはならない。」 「そうか、なら取り越し苦労だったな。」 「ああ…そうだ。」  どうやら俺の背中が見えてきたようだ。 「マスター頑張ったね!ほーらヒールじゃ。」 「POT飲んだんだけど、まだ全回復じゃなかったから助かったよ。」 「ユーグほれ!」「あざーーすっ!」次にクリスに手を翳そうとしたときに、 「わたしは自己回復できますので、後方で祈ります。」とさがっていった。  クリスは祈りを始めた。 「そういえば、あいつはどうした?ケガしたウォーリア君」 と俺が周りをキョロキョロしていると…… 「待ってくださいよぉ~」 なんとも情けない声をあげながら足をもたつかせてきた。 「なんじゃあ!全快してやったのに持久力不足か?」 ソロモンがニタニタしながらいう。 「うへ~」 息を切らしながら走ってきた。 「鍛錬しとけぃ~」 ソロモンに背中を叩かれていた。 「まあおふざけはその辺だぞ?」 ディアナは弦を引く。  シュッ…パパパン!  天に弓を放ち、矢は地面突き刺さり、オーガの周りには結界のようなものを張った。  が、しかし結界はとかれた。 「なんだと!!??」 ディアナはそう叫んだ。あと亜種のオーガが体を赤くし両腕をクロスし、地面を叩き割り風圧でダウン攻撃と防御無視のスキルを打ってきた!  俺らは扇状に吹っ飛ばされてせっかく回復したHPが半分になった。  クリスは祈りの最中、目の前に吹っ飛んできた俺はクリスの履いているスカート状の中に頭突っ込んでしまい、下腹部を下から覗き込むようなスライディングパンチラをするような動きになってしまった。  一瞬不思議そうに見たのち、けたたましい叫びで前を隠し、俺につっかかろうとしてきた! 「落ち着け!!俺はこの状況でそんなことするヤツじゃないぞ!!!」 と慌てて言い訳をした。 「な、な、な、な、なにをやっているんですか!!」 と乙女の純情を壊すような事をした俺に動揺した声が響く。  俺はさらなる言い訳の追撃をする。 「だから、落ち着け!よく考えよう!目の前にこの状況でそんな器用なことが出来るやつがいたら教えてくれ!」 と懇願したような状況になった。 「あ、そうですよね。ていうか、やばくないですか?これーー!!」 「そうだよ!君のパンチラみてる余裕があるわけないんだよ!!」  そうだ。ディアナはどこだ!!あいつがオーガに一番近かった。  ディアナは木と木の間に“くの字”に曲がり、布団を干すようにかかっていた 「結界術が解かれるなんて知らなかった!」 ディアナは動揺している。 「クソッ」  俺のオーラアタックは使用したし、他の人間も気絶効果で動けていない。  どうすれば、いいんだ!?  薄明の空が一瞬、闇を落とす  白金の光は空を舞い、急転直下に亜種のオーガの頭をめがけて踵落としをし、砕きにいった。  それは白で裏地は赤のマントをを纏い、白金の拳を持つ者。  白金の兜の後ろからは銀髪の髪。そして佇まいは、まさに美しかった。 「せ、せいんとせ…」 俺は少年期にみたアニメが出てきたのかと疑った。 「はいそこまで~!それ以上いうと版権問題やらなにやらにかかりますよ~♪」 「オケアノスさん、この亜種オーガ、一体くれないか?」 と二つセリフを吐いた。  俺はこの状況で助太刀されたことを悟っていた。 「ああ、やられるところに救世主まがいのアンタが来たんじゃ、ダメだなんていえないよね?」 「ははは、あんたおもしれーな。ギルマスってのは、意地でも獲物を譲らないんだけどな。なんせ時間かかってもいいわけだからな」 「プライドがないわけじゃない。少し無勢すぎているんだ。こちらのPTは……」 「へー。まぁいいか。少しとなりのオーガにもダメとっておくから、LAはあんたに任せる。亜種はレアなんでな。横狩りするのは性にあわないんだが、亜種は別だ。PKしてもお釣りのくるレベルだ」  その銀髪はそういうと瞬く間に亜種に近づき、亜種の横っ腹にラッシュを入れて倒してしてまった。  ついでに襲い掛かる最後の一体をいとも簡単にこかせて、俺を呼ぶ。 「ほらマスターさん、大車輪で倒せるようにしてあるよ!」  悔しいがスキルを打った。  最後のオーガはいとも簡単に倒せた。  このイーリアスの世界はLAを取った人がドロップ権利が発生する。  そのためPT以外のプレイヤーがLAを取ると横狩りとなり、揉め事の発端に繋がるため紳士協定の暗黙のルールはここに存在する。  銀髪は去った。 「さて目的は果たした。ではまたどこかで会おう!たらば!違うサラダ!!」  というと、薄明の空が落ち、オーロラの空へ変わっていた。  その空を翔けるように消えていった。 「さらば だろうが。」 ソロモンはつぶやきながらツッコミをいれていた。 「まったくだわ。」 ソロモンに合わせて俺もいった。  俺らはオーロラを見つめつつ、消えた銀髪の拳闘士の軌跡を見つめていた。
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