第7話「千里行(後編)」

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第7話「千里行(後編)」

 ~港町ゲフェイオン~  この街に戻ってあと2日後には給料の自動払いが発生する。  アイテムはまだ売れていない。こういう時なんで売れないのだろうとやきもきしている。  即売れアイテムではあるのに…。  仕方ない。王都に戻ろう!その間に売れているだろうと信じ、馬に跨った。  帰りも同じようにクリスを後ろに乗せて走る。  あとはアポカリプスのやつらに出会わない事を祈るばかりだ。  “あの場所”を過ぎ去って王都手前の林道に差し掛かった当たりに検問所できていた。  ふと、周りをみると冒険者達が一列にならんでいる。  なにがあったのかユーグに聞き込みをさせていた。どうやら“ネタ”を掴んできたみたいだ。 「どうだった?」 と聞くと、wisが飛んできた。 「どうやらPKが多発していたらしく、大手ギルドがカンカンになっているみたいで、一斉検問らしいですよ?」 「おいおい検問って特別税収をするんだよな?」 「そうですよ?いわゆる通行手形を買えってやつです。」  現実の世界とは違い、イーリアスの世界の検問は領主ギルドに私達はあなたに服従しますという意味で通行手形を買い、お金収めることである。それでこの世界は街を出入りできる。  が、今回はどうやら刷新したものを配るらしい。  治安維持のための運転資金になるので、仕方がないものではある。  にしても、痛い出費であるのは間違いない。  仕方なく並んでいると遠くで大声が聞こえてきた。 「冗談ではない!」 「この私に通行手形を買えというのか?この聖闘士(セイント)に!」 「あ、あいつ…」 ソロモンの胸をコンコンと叩き、あれあれとさしてソロモンの視線を伸ばした。 「おい、このまえ版権問題がどうとかいってたやつじゃな!」 「ていうか、自分でいうか???フツー」  俺はソロモンに順番を任せて近づく。  やはり、銀髪の拳闘士だった。  大手ギルドの下っ端ともめていやがる。  PKモードオンにしてNPCの衛兵を潜り抜ければ、街の中には入れるがそれを行なうとお尋ね者となり、賞金首になる。1週間は犯罪者扱いされ、統治内のみ適応される。  俺は彼を宥めることとした。 「落ち着きなよ。拳闘士さんよ。」  俺は彼の肩を叩いた。 「だれだ!気安くさわるな!」 俺の手を払った。それと同時に俺の顔を見るないなや目を輝かせておおっと叫ぶ。 「聞いてくれ、マスターさんよ!こいつら俺をみて通行手形を払えっていってるんだぜ?この()()に向かって!」 ―――いつから英雄なんだ?? 「いやしかし、通行手形はれっきとした仕様だからなぁw俺は払うつもりでいるけど……」 というと、彼は声を荒げた。 「何をとち狂っているんだ!この土地は新規も古参もいる街なのだ!こんなバカげたことをすれば、新規ユーザーは減り、人口が減るではないか!それを領主さんは知っておられるのだぞ??」  たしかに銀髪野郎のいうことはもっともだ。しかし、今統治しているギルドは中々のギルドだし治安維持のための通行手形は定石であると思う。 「いいから払ってください。じゃないと反抗とみなしますよ!?」  検問者は荒々しい態度でいう。 「よかろう!この我が正義の拳で語らせてもらおう!!」 「はい、ヤメヤメ!!俺が払うからこの場は収めてくれ!!」 俺は慌てて二人を離した。 「げせぬ!げせぬはぁぁ!!!」 「後ろの人間にも迷惑かかるんだからやめなさい」 といったが、彼はPKモードをオンした。    警笛が鳴り、俺らは囲まれそうになった。しかし銀髪は空を飛び、地面を叩き、衝撃で衛兵と検問者を吹き飛ばした。 ―――あーあやっちまった。  こうなると、話は銀髪に犯罪者マークがついた。俺は慌てて離れる。彼は検問者を倒し衛兵と互角の戦いをしている。おいおいおい!!あの衛兵ってシステム上、倒すのに時間かかるんじゃないのか? しかし、彼は電光石火の如く周りを一蹴する。  彼は俺の方に向かってきた。と思ったら俺の後ろの衛兵に飛び蹴りスキルを打ち放ち検問の列の最後尾へ向かう。  俺はとっさに彼を追いかけてしまった。彼はどうやら逃げるつもりらしい。  そこでソロモンと並んでいたクリスと銀髪は目が合ったのか、急に立ち止まる。 「おい、クリスティーナじゃないか!!」 「お、お兄ちゃん!!??」 「貴様、このゲームはもうやめろといっただろうが!」 「別にいいでしょ!?私の好きでやっているの!!」  と、兄妹喧嘩が始まった。 ―――こいつ、とんだトラブルメーカーじゃねーか!!!  そうこうしているうちに、衛兵と監視官、そしてギルドの副隊長クラスまできた。これは分が悪すぎる!検問官は俺らを指さして何かを伝えている。どうやら俺らも一味だと思われている!?これは相当まずい!支払いが済んでも根掘り葉掘り聞かれて面倒くさいこと間違いなし!!!!  一難去ってまた一難っていうのかこういうの!!?  ソロモンとクリスを馬に乗せて逃げることにした。 「ソロモン、とりあえずこの場から離れろ!!」  俺はすぐさまここを立ち去ることを提案した。  銀髪は自分の馬を木の陰に隠してたらしく走り抜けている。  俺らも捕まるまえに逃げよう!  かくして俺らは必死になりながら、王都を後にした。  ~王都が見える丘~  俺らはちりじりになりながらも、なんとか追ってから逃れられた。俺は馬をおり、銀髪に文句をいった。 「どうしてくれるんだよ!!これじゃあ給料未払いでギルド解散しなくてはいけないじゃないか!!」  俺は刀を抜き、勝ち負け関係なくやけくそでPKモードをオンした。  一気に一触即発の状態になったその時、「セイメイさん待ってください!」とクリスが叫んだ。 「兄が暴れて迷惑かけてしまい申し訳ありません!!」とクリスが謝った。  さっきまで検問官と言い争いをしていたとは思えないほどその兄は落ち着いていた。 「おいてめーなんでそんなに落ち着いていやがる!きにくわねーな!」  すかさずクリスは割って入る。 「兄は…その、助けにきてたのです」 「はぁ???」 「実は先日倒れていた際にセイメイさんは私を救ってくれましたよね?」 「ああ、アポカリプスの連中からのことか?」 俺は思い出しながら話をしていく。 「そうです。あのとき、兄に連絡をしてて助けてもらう予定でした。」 「えー?あー??そうなの???」 「そうです。」 俺は謎が解けていない。クリスは話をつづけた。 「あのあと、すごく良くしてくれていて気持ちが動かされて一緒に旅をしたんです。」  銀髪がようやく口を開いた。 「我が妹を助けるため仕方なくむかったところ、妹のキャラはいなかった。そのためメッセンジャーでのやり取りを行った際、君たちの後を追う事になった」 「私はもう大丈夫だよっていったんですけど……」 「この私の妹を救ってくれた御仁に礼を言いたくてな!フハハハハハ!!」 「んじゃあ御仁の俺になんでこんなわけわからんことになって巻き込まれてんだよ!!ギルドの給料日は明日だぞ??こんな大事な時期になんてことしてくれてるんだ!!」 「ほう、そうだったな。経営難なのか??」 「ああいきなり人数が増えて資金がそこをつきそうになったんだ!だから旅に出たのだ!」 「ほほう、それで?いくら足りないのだ?」 「オーガリングの指輪が売れれば、自動的にギルド帳簿に入る仕組みだ。だが、まだ売れていない」  こんなことを言わなければならない自分が本当に悔しい。なぜ俺はこんなやつのために事情を話し、更に検問から逃げなけばならなかったのだろうか!! 「ふむ…。」 銀髪はシステムを開き取引所をみている。 「よかろう!この価格なら資産扱いにして私が買ってやろう!!」 「は?バカいってるな!このアイテムはな……」 「そうレアアイテムだよ!?」 俺の言葉を遮るようにいってきた。 「俺が求めていたアイテムとは少し違うが、先ほどの無礼をお詫びするつもりでこれを購入しようというか、今した」 「なぁにいっていやがる!そんなポンと買える資金なんざもってねーだろうが!」 とまくしたてようとしたら……。 システムで【オーガリングの指輪が購入されました】と出てきた。 「ね?」 銀髪は笑顔でいう。 「これでセイメイ君の悩みは解決したわけだ。妹を救ってくれた礼は亜種討伐の助太刀、そして、今回のお詫びもこれで済んだわけだ。」 そういいながら不敵に笑っていた。 「ちょっとまて。クリスは助けに来るのは知っていたのか?」 「あぁいやその…。実は…あああっはあははは……」  兄妹揃って食わせ物である。  ソロモンが「だからか!」となにか閃いたような声をあげた。 「いやほら、マスターとか回復してた時にクリスだけ下がって祈祷してたでしょ?あの時のもうわかってたんじゃない?」  俺はすぐ振り向いてクリスをみた。 「連絡が来てて、キャラを後衛で回復させている時に兄に居場所を連絡したのです」 「な、なんだって!!?」  俺は、どうやらいっぱい食わされたのだ。 「セイメイさん、私の祈祷終われば、神(ゴッド)のご加護(ブレス)が発動して、短時間ではありますが無敵になりますので、そこで全員でラッシュをかけてもよかったですからね♪」 と何食わぬ顔の笑顔でいう。 「おいおいそれで俺らの亜種報酬をわざと俺から許可を取って横取りか???」 また腹割ら煮えくりかえりそうになった。 すると銀髪は鼻の頭をかきながらいう 「そうだけど、まぁ結果はスカだったわけなんだなー!人を騙しても良い結果はでないってこと。お天道様がみてるのだ!!」 「おまえら……!!」 「その罪滅ぼしにオーガリングの指輪を落札して解決はしたのだ。騙してた事は悪かったよ。そんなに目くじら立てないでくれたまえ!それとすまん。妹を救ってくれてありがとう!」 彼は頭を下げてきた。 ここまで謝罪と感謝をされたら、怒るに怒れないのだ。彼らは非を認めていて、感謝の礼もしてきた。そして、俺らのギルドの問題解決をしてくれているのだ。 しかしだ、ものすごく不完全燃焼なのだが!!冷静になって当初の目的は考えた。  そう、意外な結末ではあるが解決をしていたのだ。 いとも簡単に最初の悩みはこんなカタチで解決してしまったのだ。あまりにもあっさりと苦労が水の泡になったのではないのだが、そこの感触だけはじとっと心にへばりついていて中々とれなかった。 「なんだこの腑に落ちないのは!!」 俺はイライラしていた。  ソロモンが俺に耳打ちする。 「ついでにブリューナクを取りに行くというのに同行させようぜ?こいつの火力はお主も知っておろうが。」  たしかに強い。戦力としてはディアナの穴をコイツが埋めてくれれば、ギルドとしてはなんの問題もない。 「でも、こいつ今お尋ね者だぞ??」 ソロモンにいう 「高火力問題児がこの先の逃亡生活に役に立つのだからPTにいれておいてそんはないぞ?」 さらに俺の懐を見透かしていう。 ―――くそっ!もうやけくそだ!!! 「おい、そういえば銀髪。名前聞いてないな。教えろ」 「我が名は、アイオリア。聖闘士だ!」 「……。おまえ、それ自分でまずいって言ってなかったか?」 「いいのだ」 ……コイツ、ユーグよりひどい厨二キャラだ!!!そして自己中!!!ユーグはネタな部分はあると思っていたが、コイツは筋金入りの方だ!!! そして、にやりと笑いながらアイオリアはいう 「クリス、おまえはこのギルドに入ったのか?」 「うん、セイメイさんが優しいから」 「よし、じゃあ兄である私も入ろう!!」 「……、は?はぁ????????」  俺は耳を疑った。振り向いて目を合わせると、ソロモンやユーグは手でOKを出していた。  まぁブリューナクの事を考えたら…。この先の事を考えたら、安い買い物だと思えばいいか…。 ―――んーーーーなんかしっくりこねーーー!!!!!!  そして、アイオリアは我がオケアノスのギルドに入ったのだった。アイオリアには、きちんとしぶしぶだと念を入れた!!  そうこうしていると王都からの追ってが林道に待機しているのが目に入ってきた。どうやら俺らはお尋ね者になってしまったようだ。  ~南の離島~  王都より南にいくと海に当たる。  そこより、南に船で移動すること1日活火山が見てくる。そこで手に入る特別な鉱石を拾うことが目的である。  俺らは当分、王都に入れないので、南に進路を取る事となった。  当初は俺はソロで様子をみて、みんなに声がけをしギルドクエストも兼ねていく予定ではあったのだが、少し予定が狂ってしまった。まぁ、アイオリア。君の実力を借りようとするか。 「まぁマスターよ、出会いってのは大事にすべきじゃ。」 ソロモンは俺に優しくいってきた。 「大丈夫かな?」 俺は相変わらずの疑り深い癖がでてしまった。 「南ってことはパラダイスじゃないですか?♀プレイヤーがたくさんいて目の保養になりますね?」 ユーグは楽しそうにいった。それはそれで美しい描写ではある。 「では、我がマスター。これより千里の旅が始まりますよ?いざ出陣!!」 とアイオリアは軽快に馬を走らせた。  かくして、俺たちは王都からにげるように馬を走らせた。 「セイメイさん兄共々よろしくお願いします」  クリスは俺に丁寧にあいさつをいってきた。 ―――この先には難所があるのだぞ?まったく千里行だな……  三国志に出てる関羽公とは違った、俺らの千里行をするのであった。
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