第8話「離反者(前編)」

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第8話「離反者(前編)」

 さて、千里行である!!  と、いいつつ、最初に立ち寄った村で、良い時間になったのでみんな寝るためにログアウトし、南下は次の日になった。 仕事はさっさと終わらせて快速で帰り、PCをつけてログインする。  時間を合わせてソロモンが入ってきて、兄妹が続けてログインする。  さて、千里行の続きである。  最初の村をすぐに抜け出し、南に位置する活火山へ向かう。  道中の山脈があり、そこを越えるか迂回するかになってくるが山脈なら国境越え  迂回すると時間はかかるが平地だが、待ち伏せされる可能性が高い。  さてどちらを選ぶかな…。  馬を走らせながら悩んでいた。  ほとなくして、コンスタンという湖の畔にある街によった。  ~湖畔の町コンスタン~  ここは生活コンテンツのワイン生成をするブドウが栽培されており、とても盛んだ。俺の労働者達もここで栽培・生成・箱詰め・納品を行うサイクルをやっている。イーリアスの神への奉納と題して、対価を得れるようになっている納品金策の一つ。  湖畔とブドウ畑の景観が美しい。  湖畔に浮かぶ島に王国公認の聖メシアの大きな教会がある。こののどかな風景はどこかの絵画を切り取った絵のようだ。俺の脳内はその絵画がパズルのようにパチッとはまるような場所だ。  その大きな教会で聖水を受け取り、簡易錬金で大いなる聖水を作りやられたときのことを考えて所持する様にした。大いなる聖水は一日で最大で5個まで所持できる。人数分+自分用だという感じで所持できると思えばいい。その準備を終えて、みんなに聞くこととした。 「ソロモン、どうする?」 「現実世界なら迂回じゃろ?」ソロモンは山脈をみていう。 「でもこれ、山道ですよね?しかもこれ切り出した山が多くないですか?」ユーグは声が引きつっている。 「その隙間を縫って渓谷を越えるんだよ!」 ソロモンは激を飛ばす。ここまで、アイオリアは無言だ。 ―――こいつなんでしゃべんねーんだ???  お前のせいで逃避行してんだろうが!!!!!  千里行とかかっこよくいったけど、ただ逃げてるだけだからな!! 「おい、アオリイカ!なんかいうことはねーのか?」と少し不満げにいった。 「マスターよ、…ワタシはイカではない!!アテナの加護をもつアイオリアだ!!」 「……。わかった、わかった。俺が悪かったよ。ツッコミどころ満載だけど、アイオリア君。君の意見を聞こう」  俺は嫌味のつもりがキャラでこんなしっぺ返しのカウンターを食らうと思わなかった。 「我がマスター!よくぞ聞いてくれた!!!この“英雄”アイオリアに助言を聞くとは、中々の羨望だ!」 「わーったから、はよしゃべれ」 俺は頭を抱えながら促した。 「ここから南下し、かの精霊が住むグレイアン山脈を越える。迂回ルートはジェノヴァを通る。あそこはダメだ。全統治ギルドの場所だ。あそこは各統治地方(エリア)のギルマスが集まり、統治場所を回すとかいう談合モドキの会議が行われる街だ。  あそこは不可侵条約による中立地域でもある。あそこの手前で待ち伏せして中立地域に入る前に囲まれる可能性が高い。よって!!山脈越えを是とする!!!」  おーっ!ソロモンとユーグは拍手をしていた。  口を開いたら、まぁしゃべるねー。しかも普通に会話できるのね?それ通常時でもお願いできませんかね??中二病のフルスロットルオーバードライブない方がいいと思うんだけどなぁ。  とりあえず、そのままでいてほしいのでツッコミはしない。 「ジェノヴァってサービス開始して以来の名家のエリアなのか?」 「我がマスターよ!なぜ知らないのだ!?グスタフ・フォン・マイヤー大公殿下ですぞ?」 「す、すまん。よく知らないんだ(汗)」 「では、説明致しましょう!」 「グスタフ氏は、この世界が始まって以来の全てクエストをほぼ終えているという噂だ。しかも占領戦での数多の戦線をくぐり抜けて殿堂入りを果たし、ギルドを持たなくとも、存在が“ギルド”なのだ。そのため、強者たるもの、バランスをとる必要性がある。そのためギルドの解体があった。  あの人が動けば歴史が動くとまで言われている。あそこですべてイーリアスの世界は統治されている。アーモロトなんて名ばかりの首都で、実際はジェノヴァが首都機能を果たし、アーモロトは形骸化しているのだ。」 「あーなるほど。そんなすごいプレイヤーがいたんだ。いそうだなって思ってはいたが、実際にいるとはなー。」 「極めつけなのは、爵位をGMから与えられているところなのだ。そして姓もつけているのです!」 アイオリアは自分の事のように言っている。デーンとアクションをおこしてキメ顔でいう。それをみて、ユーグとソロモンはゲラゲラ笑っていた。  そういえば、姓名という概念がゲームだと自然とないのが普通だと思っていたが、上位層になるとそういうことになるのか。  とりあえず、俺らは山脈越えをすることにした。 山越えをすれば、国境を越えることになり、お尋ね者ではなく一時的にだが亡命者扱いになる。しかしここの山には数多くの伝説の魔物が住んでいる。それらを精霊たちが宥めて安寧の秩序が保たれているという。  湖畔の沿岸を馬を走らせると山脈から流れてくる川があった。  ~ローリアイ大長河~  この川はコンスタンの湖をさらに北上し、アーモロトの首都の水源でもあるのだが、さらに北上し、途中工業地帯の大運河と合流し、港町ゲフェイオンまで続く川でもある。これを軸に山脈をのぼっていくというのだ。  馬でいけるところまで登ろう。比較的、川沿いは緩やかな勾配で馬も苦しくなく、走ることができた。山々を双璧に挟み、少しずつ海抜が上がっていく。後ろを見ると湖畔は小さな水溜まりのような大きさになり、山々のすそ野に隠れてしまった。  前をみれば、最初の関所町“パスガ”に到着する。  ~関所町パスガ~  ほぼ四方を山々に囲まれており、天然の要塞のようなところだ。町はゴシック建築が立ち並び世界名作劇場に出てくるような街並みだ。  かつて、サービス開始時における黎明期の占領戦ではここを占領(とっ)たものが戦に勝つとまで言われた場所だ。そのためここは攻略の難所とまでも言われている場所だ。  無論、今はアーモロトを占領しているやつらもここを重要視していているが、占領時期ではないため、手薄である。このままやり過ごせることを願うばかりだ。 「やけに静かだな……」  普通に町に入った時と変わらない状況だ。 このまま通り抜けようとしたら、出口側の方にマリア達がいた。  ユーグが近寄っていくと召喚獣を呼び出しユーグを攻撃した!サラマンダーを呼び出し炎の一撃をくらわす。 「え?」と聞き終わる前にユーグの周りには、炎に包まれて後ろに控えてたアサシンが急所打ちを打ち込んで倒れた。 「マスター!!あいつ……!!」 ソロモンが詠唱を始めた。  マリアが声高に叫ぶ。一般回線か。 「これはこれは!オケアノスのセイメイさん、お久しぶりです♪」 「おまえ…仲間を殺すとはな……」  ユーグは戦闘不能状態か…。復活させるにはコイツを少し移動させるしかないなぁ。 「なにをおっしゃいますの?私はあなたの留守にエウロパギルドからオケアノスを潰すと言われ、私はそんな蛇に睨まれたカエルのような状態のギルドはぬけさせてもらいましたわ!」 「な、なんだと!?」  その追手エウロパは、占領統治ギルドで指折りのギルドだ。まさかアイオリアを加入させただけでそこまで情報がまわるものなのか? 「まったく、はた迷惑ですわ!よそ者を次々と入れて、私がいるのにも関わらず、また私の支援者を入れていましたのに!」 「それはそれだ。どんなやつだろうが、よほどの事がない限り面倒みるのがギルマスの務めだろうが!」 「それに、セイメイさんは私になびく事もないですのでねぇ…」 「は?ギルマスが自ら女にかまけて女性プレイヤーのケツを追いかけるような恥さらしができるか!!」 「他の支援者はすぐになびいて頂けるのにあなたは私になびかない。それは失礼ですわ!」 「他の男は知らんよ!まったく、くだらん放送主だな。俺はそんなのどうでもいいんだよ」  マリアはむっとして激情した。 「だからあんたは、時代遅れなんだよ!」 「そうやって感情むき出しにして、信者が喜ぶのかよ!呆れた女神様だな!」  俺は刀を抜いた。 「あんときのやられたのは演技だったというわけだな」 「そうよ、あんたみたいなお人好しは簡単だったわ!私は手ごろなギルドに寄生してギルドバフを受けれてればいいのよ♪」 「ほんと、くそみたいな性格だな!」  時は少し遡ると、マリアがギルドに入ったときのことを思い出す。  西側に位置しているイーリアス大陸の海峡を挟んだ列島に用があった。  当時、俺は伝説の聖槍ブリューナクを手に入れるため、クエストを消化しに出向いていた時である。その際に列島にわたる前の中心街、イーリアスきってのカルシテという大城塞都市で出会った。  ~大城塞都市カルシテ~  そのとき、占領戦の戦時中に傭兵を募集していた。旅の資金も倉庫から引っ張ればあるのだが、現地調達と占領戦の雰囲気を味わいたいと思い、占領戦に参戦すべく募兵に参加した俺は、異国のいで立ちでいるプレイヤーが幾人かはいたのだが、とりわけランカーという枠組みで一小隊預けてくれるようになったのだ。  傭兵枠での一小隊というのは異例である。通常は息のかかったギルメンが配備されて上からの指示を歩兵に伝えるという役目なのだが、(俺からしたら、中途半端な)ランカーということで、遊撃隊の一部に加わった。ここの戦時は前占領ギルドの奪還において躍起になっている。  城塞都市を落とすには現実世界では兵糧攻めが正しいのだが、ゲームであるのでそんなのはない。  四方から攻めて穴が開いたところに一点集中をしかけるという戦法である。  まぁタクティクス要素はあって無いような戦場ではあるが、城塞都市を落とすというのはギルドの総攻撃力を誇示するパフォーマンスにもなる。  その城塞を落とす際にかって出たというのが第三者的見方になると思う。  さて、開戦のファンファーレがなり、BGMも戦時の音楽が流れる。 「セイメイさん、よろしく」 遊撃の連隊長からメッセージを受け取った。  俺らは遊撃隊であるので最初は戦場を走り、戦況を伺っていた。城壁内に兵はいる。が、討って出るやつがいるかおびき寄せる必要性がある。  中々動きがない。 「連隊長、ここは俺が仕掛けて囮をやる。タイミングで後ろを取って崩しにかかろう」 「セイメイさん、それ無理じゃね?」 「かかればめっけものだよ。ポカーンと4時間もしてられんしな。すぐ戻ってくる!」  そう言い残し、4名を連れて南側の小高いところから様子をみる。 「んー大砲は打ち込んでるんだよなぁ!」 「あ、数名大砲の位置を把握したやつがいやがる!」 「おい、あいつらつぶしにいこう」囮作戦を中止し、そういって近づき、俺らは相手の後ろを取り討伐に成功した。  占領戦・拠点戦は死んだら自城または砦、近くの町に転送することとなる。または、大いなる聖水の数の制限内。  俺らはすぐに隊へ復帰した。 「あいつら大砲の位置大体把握しているから下げるか移動するか伝えてくれ」 「ほう、で、(伏兵)潰した?」 「おう、だから報告の通りだ」 「サンキュ!」  こういった小さないざこざの前哨戦があちこちで勃発していく。  じわじわと持久戦を敷いている以上、決定打に欠ける。  城門の突破を大筋として用いられるが、やはりというかどうしても尖兵達が遠距離職に潰されているようだ。そこに遊撃隊は応援に行くことにした。  そこは大激戦区だった。味方には武器の当たり判定がないため、すり抜ける。みんな接近戦だ。  沸騰した水疱のように魔法陣や召喚獣が暴れまわってそこにオーラアタックの輝きやなにやらで、眩い閃光の嵐の連鎖であった。そこに俺らは突撃をした。一点集中型が功を奏したのか、尖兵を守りながら城壁を壊して中に入れるようになった。 「おい、また新品の門が設置される前に攻めるぞ!」 連隊長が激を飛ばす。向こうのギルドVCではかなり激が飛び交っているようだ。  俺らは城内に入り、出せるだけのスキルを使って敵を薙ぎ払った。  CT中になったので交代し、後続に委ねた。  回復POTを飲み、周りを見渡すと転倒させられた味方表記のウィッチがいた。それがマリアだった。危ない!という暇もなくカウンタースキルで敵を押し返した。 「ありがとう!助かったよ~!お兄さんかっこいいね!」  一般回線でいってきた。  この一般回線が面倒だ。敵味方関係なく一定の距離内には丸聞こえなのだ。ものすごく恥ずかしい! 恥ずかしいを堪えて俺も一般回線でいう。 「俺はそんなお世辞はいいから下がって回復しろ!城門は壊れた!一人でもウィッチが後方支援やら召喚獣を出して(戦線)ラインを維持してやれ!」 叫び戦闘を継続する。 「まったね~!」 言い残してマリアは城内に入っていった。  その後、大城塞カルシテは陥落し、前統治者のギルドが雪辱を果たし、次の占領戦までお開きとなった。  戦闘報酬は一般の傭兵よりは優遇措置されかなりの大金を手にすることができた。  これで新しいイヤリングを購入して少しでも攻撃力がUPできるぞ!と喜んでいると先ほどの連隊長が俺を呼んだ。 「セイメイさん、うちにきて今後も活躍してくれませんか?」 ギルドの勧誘だ。大変名誉なお誘いなのだが、入ったあとの人間関係に遠慮しなきゃいけなのかと思うと今の俺には辟易している真っ只中、ど真ん中直球どストレートなので見送りをした。  だから、俺は人間関係につかれたくないのでギルドを立ち上げて所属するから所属させてもらうに変更路線をとったのだ。  そしてもう一人俺を訪ねる人がいた。  それがマリアだ。マリアは俺に感銘を受けたというが、うちは2.30名を入れられるほどのギルドではない。それでもうちでやりたいとのことだったので全員受け入れてた。その後、俺は聖槍探しの旅を断念し首都アーモロトに帰還するきっかけの一つにもなった。  もう一つの理由は、カルシテより南東に位置する南のバカンスの島、活火山の麓になにかあるようだという情報だけは入手したためである。まずは西より南だそうだ。  そして彼らを受け入れたあと、のちに財政難にぶち当たるのであった。
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