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第9話「離反者(後編)」
「さて、お遊びはここまでよん♪」
召喚獣を呼び出し、おれらにとどめを刺す気だ。
俺は最後に聞くことにした。
「なぜ俺のところにきた?自分で立ち上げることも出来ただろうに!」
「はぁ?私はどこのギルドでもいいのよ。私に魅了されて数多の男は私に熱を上げてアピールしてきた。その度にギルド内は荒れ、解散していく。これはある意味快感なのよ。」
ソロモンがいう。
「ハニートラップと駆虎呑狼の計じゃな」
「世間一般はそういうわ。最後のクコなんちゃらは知らないけれど、でも私が一番でなくてもいいの。その一人一人の中で一番でいいの!」
アイオリアが拳を構えていう。
「ギルドクラッシャーちゃんかぁ。俺はそういうメス豚を俺は幾度となく退けて晒しあげてきたわ!!」
…。ん?あれ??また中二病は治まってるの???
「俺も知っているよ。放送主で囲ってもらって“ナイト君”たちが君みたいな“姫”を祀り上げるのをね!でも俺はそういうの虫唾が走るんだよ。どうせ童貞共の集りだろ??」
後ろに控えている信者が一気に戦闘態勢に入る。
「なぁんだ!図星かよ!!きしょくわり~な!!同じ童貞君たちを知っているが、一生懸命に一人の女の子に求愛し、ライバルと凌ぎを削り付き合っていけるように努力をして告白をしている。そんな純粋な気持ちをもっているのだ。その誠意は美しく汚してはならない。純粋なハートなのだ!!
貴様らは!!はなっから戦おうとせず、ゾンビのように心を投げ捨ててるような死体(くず)に興味はないが、我がマスターの前を阻むのならば、俺が潰す!!そんでもってよくある話をしてやろう!!あわよくば童貞卒業させてもらおうとしているハイエナ野郎の歪んだ烏合の衆には、俺の拳で文字通り鉄拳制裁ってやつを喰らわせてやるよ!!」
「おら!!!どいつから死にてーーーーんだ???前でろや!!!!!」
信者達は少したじろいだ。
こんなやつらでも俺のギルドに所属していたんだ。仲間になれると思っていたんだ。これから少しずつでもと思っていたのに。所詮はこのレベルなのか?ネトゲー民は…。
悔しさと悲しさと哀れさが洗濯機でぐるぐる回っている服の気持ちのようにかき乱された。あとアイオリアってイカレてる中二病を演じておいてこういう時にまともにいうやつってタチが悪いよな?
なんつーか、アイオリア。お前の高火力期待しているぜ!!追手の占領ギルドさんにやられるのも嫌だが、こいつらに賞金を持ってかれるのはもっと嫌だ!
―――ていうか、こいつがもともと原因作ったんだよな?あれ?お前が原因なんだからなんとかしろよ!!なんか俺、いっつもこいつに一杯食わされているよな??
と、困惑しつつ、戦いの火ぶたは斬って落とされたのだ。
アイオリアは天高く舞い、相手の固まっている地面に向かって、かかと落としをした。
当たり一面に閃光が放ち地面は割れ衝撃波が辺りを巻き込む!
信者達はMOBモンスターのようにバタバタと膝をつき倒れていった。
「おいおいおいおい、こんなんで姫様をお守りできるのですか?ナイト殿!」
倒れ損ねている辛うじて生きていた信者の頭を鷲掴みにし、残党狩りを始めた。掴んだ頭を地面に擦(こす)りつけるようにし、引き釣り回して残りの信者にめがけて投げ払った。
そして瞬時に間合いをつめると、
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!!」
数名の信者に向かって数多の光を放ち、信者たちを滅多打ちにする。カウンターを打ってきようものなら、足払いを入れカウンター外しを狙い、その回転を利用してすぐさま中段回し蹴りを放つ!!
相手はもう瀕死だが、彼を止められるスピードを俺は有していない。
オーラが彼の拳に集まる!!
「フハハハハ!!くらえ!!!著作権ギリギリコード!!!」
「ライトニング・バースト!!!」
ここで水を差す第三者からの説明の仕方をいうと、正拳突きを打ったあと、さらに左手で右手の手首を支える様に掴み、いわゆる放った技の標準をぶれないようにするためと反動を抑えるように構える。
二段構えだ。左手には残りのオーラの残滓がかすかに残り、そして打ち尽くした後には消えていった。
敵は瞬く間になぎ倒されていった。
後方支援にいたのは、あの三バカトリオだった。
三バカは怯えていた。
アイオリアは三バカに向かいながら横目にマリアにいう。
「てめーは最後だ!!!!こんな簡単に殺さねー!!聖水を空にし、ログアウトするまで追い込む!!今ならログアウトする時間を与えてやる!」
マリアは金切り声で叫んでいたが、アイオリアは聞く耳を持たなかった。
俺はマリアに話しかけた。
「あー、俺が本当はやる役だったんだけど、完全に俺達が出る幕はなさそうだが??それでもやるかい?」
「くそ!しね!!」と暴言を言い残してログアウトをしていった。
一方、アイオリアは三バカのとこまでいき、手刀を掲げていた。今にも振り下ろそうだった。
たまらず、俺は声をあげた。
「戦闘意思がないものに手を挙げるのが真の聖闘士なのか?」
アイオリアの手刀に少し迷いが見えた。
「見てみろ。彼らは信者の中でも戦闘態勢にしてないだろ?無益の殺生をするのもアテナの教えなのか?」
アイオリアは手刀を降ろした。そして、俺はアイオリアに近づき刀を納めアイオリアの肩を叩いた。 三バカは酷くおびえていた。一般回線は継続中だ。
「おまえらの親玉はお前らを捨てて消えちまったけど?」
ホルスが最初に口を開いた。
「セイメイさん、俺こんなことになるなんて思ってなかったです」
たしかにそうだ。俺がアイオリアを入れて迷惑かけた事実は俺に責任がある。彼らを見過ごしてあげるのもありだと思っている。
「私は今回どっちの味方にもつく気はありませんけど…。」
マノはグラニを見る。
「自分は今回の件である意味、目が覚めました。アイオリアさんのいうことは正しいですし、自分には出来ないので正直諦めてはいます」
アイオリアは怒りを抑えていたのが、冷静になった。アイオリアは口を開く。
「おまえら、あんなのとつるんで楽しいか?俺はつまらないと思うぞ?」
グラニは少し不満げにいう
「そもそもセイメイさんが逃亡者になるなんておもってもいませんでした。何が起きたんですか?」
俺は事の成り行きを話をした。グラニは何か納得したような感じだった。
「俺がきいた話と全然違いますね」
「どういう風になっているんだ?」
エウロパがいうにはこうだ。エウロパに俺らが喧嘩を売ったことになっている。その際に下っ端のやつらの報復だと煽った向こうのギルメンが士気を上げている。そのため、当ギルドは当面的に狙われることとなった。まぁめんどくさいことになってはいる。
まずは先を急いだほうが賢明だ。
三人に俺は最後にかける言葉をいう。
「三人とも俺のギルドに来てくれてありがとう。短い間でしたがお疲れ様」
ホルスが何か感じとった。
「抜けている間、つまりマスターが帰って来る間に情報収集しようかと思います。戻るまでに何か有力な情報を掴めるかもしれません」
「君たちは自由だよ?俺は気持ちよく送り出しているんだが?」
「今回はどうもマリア様に分が悪いです。説得は出来ませんけど、セイメイさんに失脚をしてほしくないんです。自分たちは自分達なりにマスターを信じていなかった。それなのに、給料未払いさせまいと奔走してくれてました。その気持ちには打たれています」
ホルスは話をつづけた。
「なので、セイメイさん少しは恩返しをさせてください。こんな形ですけどやれる範囲でやらせてください」
俺は「わかったけど、無理するなよ?」とだけいって、彼らを見逃した。ユーグはというとソロモンとクリスのおかげでその場で復活が出来た。ユーグは生き返るやいなや憤りをもらす。
「なんなんすか?あのクソアマ!!次はブッ倒してやる!!!」
怒りをあらわにし意気込んでいた。
なにはともあれ、パスガを越えていける。このまま南下して大丈夫なのだろうか?まだ要所は残っている。
一難去ってまた一難とはまさにこのこと。
ディアナが抜け、マリア達は離反した。
俺は自らギルマスかってでていて、やる前から出会いと別れは存在するのに、ここ数日の出来事で、自分が少し打たれ弱いのに気づかされた。やはり、近すぎてもダメある程度の距離を保っていてもダメなのかと思うと、世知辛い世の中だと悲観してしまう。それを感じている自分がまた情けないのと防ぐ可能性を知らず知らずのうちに捨てていた事を心の中で嘆くばかりだった。
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