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マンションのベランダから眺める夜は久しぶりの星空だった。こうやって夜風を感じようと思うなんて久しぶりだ。ただ、それが良い意味でかと言えば、俄然悪い意味でなのだから――人生とはままならないものである。
ワンコインの缶チューハイをコンクリートの手摺に置いて、つきたくもない溜息をつく。
僕はどこで間違ったんだろう。僕はどうしてこの街で一人生きているんだろう。
自分らしさを感じられない職業に日々摩耗し、スーパーで買った清涼飲料水や動画サイトのコンテンツで疲れた心を癒やす日々。
そして何より――君がいない。
その刹那、空の端に光の欠片が流れるのが見えた。
――あ、流れ星!
頭の中で鳴った声は僕のものではなくて、あの日の君の声色だった。
流れ星が瞬くその一瞬に願い事をすれば、女神様が叶えてくれるって言っていた。
あの星降る夜に帰れるならば、君との未来をやり直すことが出来るのだろうか。
嗚呼、女神様、僕をあの星降る夜へ……もう一度連れて行ってください。
「――お安い御用だよ、宮倉幾人青年!」
「おわっ!」
隣から声がして思わずのけぞった。
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