あの星降る夜へ女神ウルドと跳んだから。

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 びっくりしすぎて思わずベランダから落ちそうになる勢い。なんとか手すりに掴まって事なきを得る。恐る恐る振り返ると、そこには僕と同じくらいの年頃の女性が立っていた。  部屋から漏れ出す蛍光灯の明かりに照らされて、彼女の美しい相貌が闇夜にぼんやりと浮かび上がる。長い髪の毛は白銀色で、褐色の肌、草色のボートネックTシャツは肘あたりまでゆったりと伸びていて、下にはスキニーレギンス。 「……え、誰ですか?」 「それにしても暑い夜だよね。ちょっと梅雨が明けたからってすぐに蒸し暑い夜を連れてくるなんて、夏空もデリカシーが無いよね」  何故だか夏空に対して自分を口説く男への愚痴のような台詞でぼやく女性を、僕はぽかんと眺めていた。だって、どこから突っ込んで良いのかわからないのだ。  そもそもここは僕の自室だし鍵は掛けていたはず。ちなみにマンションの八階でだし外からは侵入出来ないはず。この女性はいったい何者で、何をしているのだろう。そもそも男性のお家に、女性が一人で入ってくるなんて、危険だし、貞操観念が……とか考える僕はやっぱり古風な臆病者で、だから、いつまで経っても独り身なんだろうか?
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