星が降る夜に

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「今夜は一年に一度、星が降る夜なんだ」 「星が降る?」 「うん。星は一年に一度だけ、そのすべてが入れ替わるんだ」キミの瞳には憧れの色が浮かんでいた。  それからしばらくの間、クラスメイトや担任の先生の話で盛り上がった。非日常的な空間で交わす他愛もない会話。どこか滑稽に感じられた。  会話が少し途切れた瞬間、キミは急に人差し指を口に押し当て、黙るよう促した。 「はじまるよ」  キミのそんな言葉をきっかけに、空が小刻みに揺れ動きはじめた。まるで小石をふるいにかけているように、ユサユサと揺れる空。僕はこわくなって目を閉じた。 「こわくなんかないよ。ほら、見てごらん。星が降りはじめた」  キミは僕の肩を優しく()する。僕はこわいもの見たさに、閉じた目をゆっくりと開いた。  永遠の不変さを信じて疑わなかった空の星たちが、ゴールドに着色された雨粒のように降っていく。暴力的ともいえるその美しさに気圧(けお)されて、うわぁ――と怯えた声を上げる僕をよそに、星たちは次々と街に降り注いでいった。 「街のヤツらみんなバカだろう? こんな奇跡を知らずに眠ってやがるんだぜ。明日の朝も今日みたく、当たり前のように目が覚めると信じ切ってる。それさえも奇跡だっていうのに」  目の前の光景をまだ信じられずにいる僕は、何も返事できず、キミの言葉をひとり(ごと)にしてしまった。  星が降り注ぐにつれて、空に浮かんでいた星たちはどんどんとその数を減らし、ついにはひとつの星も見つからないまでになった。  そしてキミは言う。「ほら。完璧な真っ暗闇だ」と。  月明かりだけじゃあまりに心細すぎて、気づけば僕はキミの手を握り締めていた。もしかしたら僕の爪が食い込んで痛かったかもしれない。
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